大いなる期待:世界の経営者はビジネスの混乱にいかに対応しているか

成長に向けた変革と再構築による価値創造の機会

世界の大きな転換が衝撃波のように不確実性を生み出しています。本レポートでは、経営者が今後の事業の刷新と成長をどのように考えているかを明らかにします。

エグゼクティブは、事業内容と運営方法の変革に取り組もうとしている

PwCは250人を超える世界のシニア・エグゼクティブを対象に調査を実施し、全体的な経済見通しと、新型コロナウイルス(COVID-19)によるパンデミックが将来の収益に与える影響について、どのように考えているかを質問しました。また、企業が今後3年間にどの程度の変化を見込んでおり、現時点で変革の道のどこに位置するのか、そして最後に、将来、より強靭な企業となるために特定の領域や機能においてどのような施策を計画しているか(コスト削減か投資か)についても質問しました。その結果、エグゼクティブは変革に取り組もうとしている、という明確なメッセージを読み取りました。

“COVID-19以前から、企業は、デジタル化と破壊的変化が進む時代において成功していくために、抜本的な構造改革を行う必要がありました。パンデミックは、これを加速させ、ゼロから新しい価値を創り出す歴史的な機会をもたらしました。経済がパンデミックから抜け出すにつれ、ステークホルダーも変革プログラムを以前にも増して積極的に支持しています。”

Mahadeva Matt Mani,Strategy& Netherlandsパートナー

経営者の大半は将来について楽観的で、成長に向けた計画を立てており、変革の重要性が増していることを把握しています。

  • エグゼクティブの48%が成長の加速に向けた計画を立てていますが、現在の中核事業が成長に十分に貢献できるかについては懐疑的です。
  • 78%が、市場の抜本的な変化に対応するため、今後3年以内に自社を変革させようと考えています。
  • 51%が、デジタル投資に支えられた新しいビジネスモデルと価値創造モデルの構築を計画しています。

 

ポイント

ビジネスが立ち直っていく中、大半のエグゼクティブはCOVID-19後の回復について楽観的です。同時に、大半の企業が、事業の運営方法と顧客価値を創造する方法の両方を変えることに焦点を当て、大規模な変革に乗り出そうとしています。変革はあらゆるセクターで計画されていますが、製薬や保険といった業界で最も根本的な変革が予想されています。

自社についてのエグゼクティブの将来見通し

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大半のエグゼクティブが、デジタルが可能にする新しいケイパビリティを手に入れ、それによって新しいビジネスモデルを構築し、オペレーティング・モデルを適合させて競争力を得ることに重点を置いています。

  • 2007年から2008年の金融危機のような、企業がコスト削減に注力した過去の危機とは異なり、今回のパンデミックではビジネスを抜本的に変革する必要性が加速しており、エグゼクティブは変革に向けた投資に積極的です。
  • 経営者は、新しいビジネスモデルの開発や企業戦略の見直しなど、収益向上策を最優先事項としています。
  • 全回答者の17%がESGをビジネス上の優先事項と位置づけており、経営課題となっています。
  • 追加投資の平均10%から15%が、主にデジタル化、サイバーセキュリティ、営業に向けられており、収益の増加を牽引しています。
  • デジタル化への投資は、デジタル・ビジネスモデルと融合する新製品や新サービスの開発に集中しており、IT・デジタルケイパビリティ(追加投資の15%)、サイバーセキュリティ(同11%)、環境・ヘルスケア・安全(同11%)の各機能への投資割合が最も高くなっています。

ポイント

エグゼクティブは、新しいビジネスモデルの構築と、デジタル化による危機からの脱出および将来の成長の牽引に注目しています。しかし、デジタル化への投資は大半がまだ新製品や新サービスの実現に向けられており、フロントオフィスでは削減が見込まれています。このデータは、多くの企業が、単なるコスト削減、ポートフォリオの再編成やアドホックな技術ソリューションの開発を行うだけでなく、自社の中核的な事業戦略を見直し、修正する必要があると考えていることが示唆しています。ESGは経営課題のひとつに位置づけられており、今後、どの企業もESGの優先順位をさらに上げていく必要があります。

2021年以降の戦略的優先事項(全回答者)

2009年の景気後退への対応調査での戦略的優先事項(全回答者)

※ Booz & Companyが2008年1月に実施した調査「Recession Response Survey」回答者数:155人
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効率化の目標は限定的で、テクノロジーにより実現可能な人とオペレーションに集中しています。

  • エグゼクティブは、自社の将来の戦略的ポジショニングに不可欠とはいえない機能のコスト削減を計画する一方、成功に不可欠と考えられる領域に投資しています。
  • 全体として、特定の機能については最大で11%のコスト削減が予定されており、不動産、研究開発、マーケティング、人事における削減が最大となっています。
  • 雇用なき成長を通して効率化を進めようとしている企業もあります。売上見通しが楽観的な企業の41%が、人員を削減しながらの成長を予定しています。
  • 人員削減と並行して、96%の企業が、危機後の新しい働き方を可能にする「未来のオフィス」への移行を検討しています。

ポイント

エグゼクティブは、事業の成長や刷新とコスト削減の必要性、という競合する優先事項のバランスを取る必要に迫られています。事業を妨げない慎重なコスト対策を目指しつつ、将来を見据えた投資を可能にすることが重要です。また、コスト削減、デジタル化、雇用なき成長、新しい働き方が、従業員のストレスを増大させることになるでしょう。エグゼクティブは、自社の人材が抱える課題を積極的に管理し、変革を通してチームをうまくリードする必要があります。

テクノロジーが新しい働き方の変革を加速し、業種によっては雇用なき成長となる可能性がある

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危機からより力強く浮上するために企業ができること

1. 戦略的優先事項を再考する

将来の戦略やビジネスモデルを考えるには、業界や市場の最近の変化を踏まえて価値創造計画を再検討する必要があります。

PwCは、あらゆる観点で探索を行い、クライアントが長期的な成長に向けてバリューエンジンを再スタートさせることを支援します。ポートフォリオの最適化からESG戦略の改善、株主還元の最大化に至るまで、ホリスティックな価値創造計画により持続的なアウトカムを実現することが可能です。
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2. デジタル化・ESGへの投資

デジタル化とESGへの考え抜かれた投資を通して、新たな戦略に沿う、新しい働き方と新しいビジネスモデルの構築を実現する必要があります。COVID-19後の新しいコストベンチマークに迅速に対応し、他社を凌げる領域を探さなければなりません。

デジタルトランスフォーメーションを成功させるためには、その結果を得るだけではなく、その過程で変革のケイパビリティと組織のアジリティの両方を構築する必要があります。変革を成功させる4つの基礎的要素とは、ケイパビリティ主導型の戦略設計、従業員の配置、フロントオフィスとバックオフィスにおける先進技術の活用、「成長への企業変革(fit for growth)」を達成するためのコスト管理です。 
詳細<Fit for growth>
詳細<サステナビリティ経営支援サービス>

3. 従業員を参加させる

特に新しい働き方への移行においては、変革の過程や新しい運営方法に従業員を主体的に関与させる必要があります。

PwCは、クライアントの今日における人員戦略、従業員エクスペリエンス、労働環境の強化を支援し、将来における成功につなげます。
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従業員のパフォーマンスを向上させたい、事業に合わせて人材を開発・配置替えしたい、リスクを軽減したいといった課題を解決するために、PwCは多彩なスキルを結集して、クライアントの事業と人材に適したソリューションを提供します。
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PDFファイル内の執筆者の所属・肩書は、レポート執筆時のものです。

本調査について

PwCのStrategy&は、シニア・エグゼクティブを対象に事業見通しとCOVID-19後の刷新計画に関するグローバル調査を実施しました。米国生産性品質センター(APQC)がデータ収集プロセスを管理し、Strategy&に論理的かつ統計的に検証された調査の生データを提供しました。Strategy&は調査の生データを分析し、主要な結果とメッセージを導出しました。回答者は北米、欧州・中東・アフリカ、アジア太平洋地域の11の産業セクター(航空宇宙、自動車、消費者製品、物流・運輸、エレクトロニクス、金融サービス、ヘルスケア、工業製品、保険、製薬、小売)にまたがり、その9割以上が売上高10億ドル超、64%が従業員10,000人以上でした。

お問い合わせ先

北川 友彦

北川 友彦

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

井上 貴之

井上 貴之

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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