
Strategy& Foresight vol.25 2023 特集 岐路に立つ日本企業
Strategy& Foresight25号では、総論で日本経済や日本企業の置かれた状況を概観し、この先取り組んでいくべき提言をまとめました。そのうえで、これから一層の変革が必要となる観光・宿泊、自動車、製薬の3業界の現状と先行き、今後の対応策を提案しています。
この数年の動きを振り返ると、2020年10月の日本政府の2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするという「2050年カーボンニュートラル宣言」に始まり、2021年4月には政府による温室効果ガス削減目標の発表など、カーボンニュートラルに関わる大きな転換が進んだ年であると言える。コンサルタントとしてさまざまな企業と接する中でも、数年前まではカーボンニュートラルに関わる取り組みは各企業の中で「コスト」と見なされ、消極的に対応がされていたが、この1年間で各企業の姿勢は大きく転換し、積極的にカーボンニュートラルを推進し始めているように感じる。
特徴的なのは、各社がカーボンニュートラルの取り組みを単なる「コスト」ではなく、「事業機会」として見始めている点にある。従来、環境価値の社会への提供と経済価値の実現(自社の収益獲得)はトレードオフの関係であると見られていたが、この1年では多くの企業が環境価値と経済価値を同時に実現するトレードオンの事業戦略が存在し得ることに気づき、その可能性を追求している。
今回のテーマである「水素」はまさにCO2削減と同時に事業収益を生み出すトレードオンのビジネスとなり得る。水素の本格普及は長期的に捉える必要があるが、普及まで待たずに自社の事業戦略を検討し、実際に手を打ち始めていくことが肝要である。ただし、電力やガスといったエネルギーが溢れている2021年現在の検討にあたっては、事業セグメントを細分化して見る必要がある。例えば北米で進んでいる水素フォークリフトの導入は、「室内の大規模で高稼働(24時間稼働)な倉庫」という限定的な事業セグメントで進んでいる。
本特集号では、脱炭素における水素の役割に始まり、欧州での状況、グリーン水素についての供給側の可能性、需要側(アプリケーション)の可能性などを、具体例を紹介しながら解説する。
今後さらに急速にカーボンニュートラルが進む世界の中でトレードオンの事業を構築し、推進していくために、本特集号が貴社の検討の一助となれば幸いである。
PDFファイル内の執筆者の所属・肩書きは、レポート執筆時のものです。
ストラテジーアンド・フォーサイトは、PwCネットワークの戦略コンサルティングチームStrategy&が、経営戦略についてのさまざまな課題をテーマに、経営の基幹を担われている皆さまに向けて発行する定期刊行物です。日本企業の方に興味を持っていただけると思われる記事をリーダーシップチームのメンバーが執筆、また欧米で刊行している季刊ビジネス誌「strategy+business」およびグローバルで刊行している冊子や調査報告書の中から抄訳し、ご紹介させていただいております。
Strategy& Foresight25号では、総論で日本経済や日本企業の置かれた状況を概観し、この先取り組んでいくべき提言をまとめました。そのうえで、これから一層の変革が必要となる観光・宿泊、自動車、製薬の3業界の現状と先行き、今後の対応策を提案しています。
カーボンニュートラル実現に向けて世界で注目の高まる水素。本号ではその役割をはじめ、欧州における水素の活用状況、グリーン水素についての供給側の可能性および需要側(アプリケーション)の可能性などについて解説しています。
本号では、スタートアップ投資による変革と成長の可能性についての対談記事に加え、スタートアップ企業を活用した戦略、スタートアップ投資の在り方、対象企業の評価方法などについて、4つのレポートで解説します。
多くの企業が直面するDXの課題に対し、本号ではDXの全体像とDXによる新たな事業価値創出の概説、さらに、最高データ責任者(CDO)の機能や役割、将来像についての考察を、4つのレポートでご紹介します。