サステナブルなパッケージの追究バリューチェーン全体でのパッケージ最適化を通じ、財務目標とサステナビリティ目標を達成する

なぜ企業はパッケージを見直す必要があるのか

サステナビリティへの対応が事業存続の要件となりつつある今、国際社会では、廃棄物や温室効果ガス（GHG）排出などの問題を抱えるパッケージに対し、サステナビリティの観点で抜本的な規制強化が行われています。

食品・飲料（F&B）業界は近年、激動の時代を歩んでおり、高水準のインフレを含む経済的、地政学的な課題によるコストの高騰に加え、規制強化、サステナビリティに対する消費者の要求、消費者の購買力が低下する中での供給不足により、状況がさらに困難になっています。

こうした前例のないプレッシャーに直面する中、F&B企業は、パッケージを見直すことで、このプレッシャーを和らげることができます。

バリューチェーン全体で総合的なパッケージの最適化を行うことで、さまざまな素材タイプでパッケージコストを最大30％削減できると同時に、GHG排出削減などの形で環境へのインパクトも緩和することができます。したがって、企業はパッケージの最適化を積極的に優先すべきであり、対応しない企業は淘汰される危険性があります。

日本は「世界第2位の1人あたりプラスチックごみ排出国（国連環境計画（UNEP））」と言われているにもかかわらず、規制が緩い状況にあります。しかし、サステナビリティは世界の潮流であり、日本も遅かれ早かれ国際社会と同様の状況になることが予見されます。

パッケージのサステナビリティ課題の解決は、われわれ個人にとっての持続可能な社会の実現や企業の事業持続性と一体化しているとともに、パッケージが解決しているパッケージ以外のサステナビリティ課題とも連関しています。それを理解し、自社の製品やサービスについて、従来の延長線上で単に脱炭素化などを考えるだけでなく、今後の社会を見通し、その社会において必要とされる製品やサービスおよびそれを可能にするエコシステムを開発することが重要です。

本レポートでは、小売と一般消費財の世界的な大手F&B企業20社を対象に、各社のパッケージに関するサステナビリティの取り組みについて分析するとともに、サステナビリティへの対応が求められる時代における日本企業への助言を提示しました。今日のパッケージに関する推進要因と規制要件を検証し、サステナビリティ目標と規制要件の間の埋めるべきギャップに焦点を当て、パッケージ戦略の変革を成功させて内外のプレッシャーに対処する方法について説明します。

F&Bにおけるパッケージの推進要因とは？

F&Bにおけるパッケージで最も一般的なものは以下の4つの素材です。

パッケージの最適化を通じて財務目標とサステナビリティ目標を達成するために、F&B企業は意思決定に影響を与える8つの内的・外的要因を考慮する必要があります。

現在の市場において、詳細に確認する価値がある2つの外的要因は、ステークホルダーの要求（6）と規制（5）です。

ステークホルダーの要求については、特に消費者のサステナビリティに対する考え方に根本的な変化が見られます。サステナブルなパッケージに対する消費者の支払意思は限定的です。規制に関しては、排出量とプラスチック廃棄物を削減するための世界的な取り組みが拘束力のある法律につながる可能性があります。欧州では、現在審議中の3つの指令案がF&Bのパッケージに広範囲な影響を及ぼす可能性があります。

パッケージに関する規制状況

包装および包装廃棄物指令（PPWD）

PPWDに従い、EUのパッケージ材は一定の回収・リサイクル目標を達成しなければなりません。これらの目標は素材レベルで定められており、全てのパッケージ廃棄物に対する包括的な目標も含まれています。

使い捨てプラスチック指令（SUPD）

SUPDは、9種類の使い捨てプラスチック製品を禁止し、2026年までに特定の使い捨てプラスチック製品の消費を削減することを求めています。さらに、ペットボトルについては2025年より25％、全ての飲料用プラスチックボトルについては2030年より30％のリサイクル素材含有率を義務付けています。

拡大生産者責任（EPR）

EPR制度は、廃棄物管理（返却・回収のほか、回収したパッケージ製品や廃棄物の再利用とリサイクルを含む）に対する財務的・組織的責任を生産者に求めるものです。

F&B企業の目標と規制要件の比較

こうした規制要件の増大を踏まえ、分析対象となった飲料メーカー、インスタント食品メーカー、小売企業など、さまざまなパッケージ資材を扱う大手F&B企業の全てが、何らかの形でサステナブルなパッケージの目標を定めています。しかし、現段階では、これらの目標を具体的なパッケージ規制の中に位置付けている企業はごくわずかです。

F&B企業がパッケージで勝つ方法は？

収益性を高め、義務的目標だけでなく自主的目標も達成するために、企業は経済的かつサステナブルな方法でパッケージを最適化する必要があります。この点について、「見直す」、「減らす」、「再利用する」、「再生利用する」という4つのアクション領域から考察します。

1つ目のアクション領域では、製品・ポートフォリオの設計、ビジネスプロセス、あるいは包括的なビジネスモデルそのものを根本的に見直す必要があります。多くの場合、F&B企業には、収益性に対処し、サステナビリティを向上させるための構造改革に対する前向きな姿勢が求められます。F&B企業は、長期的な原料へのアクセスと持続的な競争優位性を確保するために、リサイクル市場など、バリューチェーンの他のセグメントに手を伸ばして、どのようなケイパビリティを社内で構築するか、あるいはアウトソーシングするかについて考える必要があります。

サステナビリティ指標を満たしながらコスト削減の実現を目指すF&B企業にとって、資源消費量の削減は戦略的なテコとなります。最も明白なアプローチは、少ない原料で済むよう軽量化を図ったり新デザインを採用したりすることで、パッケージ材料そのものの削減に注力することです。材料の量の削減のほか、エネルギー所要量、輸送の必要性、パッケージに関連する廃棄物の削減がアジェンダとして挙げられます。

詰め替え可能な容器や通い箱など、複数回使用できるように設計されたパッケージを使うことで、使い捨てパッケージの廃棄量を減らすことができます。再利用のアプローチは、消費者との結びつきを強めて企業の市場ポジションを向上させる可能性を秘めた、クローズドループシステム構築に向けた機会でもあります。ただし、個々の具体的な事例について、再利用が実行可能で有益なものかどうかを評価することが極めて重要です。

リサイクルが極めて重要な役割を果たすことは広く知られていますが、それを正しく行うことが重要です。その主要な側面は、容易にリサイクル可能で、既存のリサイクルインフラを下支えする素材を使用することです。さらに、リサイクル素材は廃棄物の削減と資源の保全を促進することから、パッケージにリサイクル素材を増やすことで循環経済に貢献することになります。

今、F&B企業が取るべきアクションとは？

企業にとっての勝負の場は多様であり、即効性のあるものから構造的で長期的な対策まで多岐にわたります。いずれの場合も、企業の製品やビジネス状況に合わせて個別にカスタマイズしたアプローチが不可欠です。

多くの場合、企業は、パッケージの最適化を推進するための社内の強力なステークホルダーや必要なケイパビリティを欠いています。サステナビリティ部門がこのテーマの最初の窓口になることが考えられますが、ほとんどの場合、調達部門やカテゴリー管理部門が、主として商業的側面を追求しながら、パッケージ最適化の推進力となっていることが多いようです。

このテーマに効果的に取り組むために、企業は商業目的とサステナビリティが交差する点に位置する以下の側面に今すぐ取り組む必要があります。

1
機能横断的に動く
2
コストとサステナビリティパッケージのKPIを統合する
3
自社のポートフォリオを分析し、検証する
4
バリューチェーンとエコシステムで連携する

Sebastian Weber、Tim Martiniak、Alexandra Ausma、Marc Wangrinも本レポートに貢献しました。

※本コンテンツは、『Mastering food and beverage packaging』を翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。