経営難に陥った欧州系銀行における、リーン主導Fit for Growth改革 | PwC’s Strategy& Japan

経営難に陥った欧州系銀行における、リーン主導Fit for Growth改革

Fit for Growth変革プログラムの対象となったクライアントは、1000億ユーロ以上の総資産を所有し、世界各地で3,000名以上の正社員を雇用する欧州系銀行でした。

状況

Fit for Growth変革プログラムの対象となったクライアントは、1000億ユーロ以上の総資産を所有し、2012年時点で世界各地において3,000名以上の正社員を雇用する欧州系銀行でした。この銀行は2008年の金融危機によって深刻な損失を被り、国家保証のおかげで何とか存続している状態でした。

EU指令によって2013年末までに政府保証債務を返済することが義務付けられていたため、追加のコスト削減が必要でした。計画は、貸借対照表をさらに40%大幅削減、いくつかの事業セグメントおよび大半の海外拠点からの撤退、従業員3分の1以上の解雇、6億ユーロ以上の事務費用削減、地元、地域の起業家が融資を受けられる銀行へのポジショニング変更を伴うものでした。

クライアントは、従業員を関与させ、クライアントの満足度を上げ、銀行が将来の成長に適した新たな形になるよう体制を整えるために必要な組織変更を行いつつ、大規模にコストを削減するという目標を達成するために、Strategy&に支援を依頼しました。

クライアントは2008年の金融危機の際には、大幅な収益悪化で苦しみました

リーン・プログラムの構成要素

Strategy&の支援

組織変革、業務量削減、コスト削減目標、組織改善を達成するための主な手段としてリーン・マネジメントが使用されました。最終目標は、この銀行を成長に適した体質に変えることでした。

私たちは、当初2つの部門から開始、徐々に組織全体へと展開して、クライアントがリーンなケイパビリティを構築することを助けました。データに基づき、厳格かつ再現可能であることを確実にするため、全ての変革の波で、効果が実証されたStrategy&のリーンな方法論を適用しました。

実施するコンセプトへのインプットを提供するためだけでなく、コンテンツや成果物の作成にも積極的に貢献するために、組織の全階層の社員を深く関与させました。また、講師育成プログラムの実施を通じて社内のリーン専門家のコミュニティ(我々は“ナビゲーター”と呼ぶ)が、確立されました。彼らは、銀行全体でリーン・プログラムを展開し維持するのに必要なスキルを獲得しました。
このように、プロセス全体で積極的に従業員を関与させたことが、継続的改善、権限付与、個人の責任を重視する企業文化を持続可能な形で浸透させることに貢献しました。

さらに、銀行が現在の課題を克服するだけでなく、市場で勝利できる体制を整えられるようにするため、顧客価値創造を生み出す活動に明確にフォーカスしたプロセスの最適化、役割と責任の明確化、適切なツール、システム、データに基づくパフォーマンス測定方法の導入を支援しました。

成果

今回の Fit for Growthプログラム実施の結果、全体の生産性が各部門で10-38%改善し、平均的改善率は24%でした。

大幅なコスト削減に加え、今回のリーン主導型Fit for Growth変革により、以下の3つの要素における改善が達成されました:

  • 顧客中心主義:チームは、明示的にクライアントのニーズに焦点を合わせ直したため、顧客満足度が測定可能な形で向上し、消費者の支出に占めるシェアが上昇すると同時に、将来的に紹介案件が増える可能性も高まりました。
  • リスク管理:強固で全体的なプロセス設計を通じて、オペレーション上のリスクが大幅に低減されました。前方、中間、後方の組織間で協働すべきという明確な意識の形成、チェックポイントとコントロールの確立、データ品質改善なども有益な成果でした。
  • 文化改革:リーンな企業文化の導入で、従業員への権限付与と動機付け、プライド醸成の効果があり、自己学習能力を持った組織、継続的改善のための共通言語を開発すると同時に、今まで以上の努力と熱意で業務に取り組もうとする意識が高まりました。

最初のリーン・プロジェクトを通じて得られた生産性改善効果

Amazon.comで1位(Production and Operations分野)を獲得した原著「Fit for Growth-A practical approach to business transformation」の邦訳版

『成長への企業変革―ケイパビリティに基づくコスト削減と経営資源の最適化』

 2017年11月22日発刊(ダイヤモンド社)

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