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Strategy&では2021年以来、個人投資家を対象とした資産形成の実態・ニーズ調査を毎年行っています。これまでの調査で世帯の保有金融資産の規模に応じて個人投資家をセグメントしたところ、各層によって運用ニーズや金融機関への期待は大きく異なりました。
アフルエント層などでは、金融資産が同等であっても、家族形態や職業によって運用ニーズなどに違いが見られます。
これら多種多様な投資家が入り混じるセグメントの中から、将来の富裕層やLTV(ライフタイムバリュー)としての寄与が大きい有望層を見つけ出し、中長期で寄り添いながら適時適切なアプローチを仕掛けることが、金融機関にとって重要です。各金融機関で既存および見込み顧客を分析・分類した上で、営業組織体制、ツールやシステムを含めた営業支援機能、人事制度などを全社的に整備すべきと私たちは提言してきました。
今回示すのは、2024年11~12月にかけて、マスアフルエント層(世帯の保有金融資産3,000万円~5,000万円)~超富裕層(同10億円以上)までの個人投資家1万736人を対象に実施した定量調査の結果です。本調査では、家族形態・職業・地域性(居住地)などが、運用のニーズや志向に明確に影響を及ぼしていることが見てとれました。調査で得られた下記のデータに加え、100件を超える個人投資家との1on1インタビューを通してまとめた見立てについても公開します。
調査項目:セグメント別の属性・資産運用ニーズ
図表①:資産規模別セグメンテーションと将来的な推移の予測
出所:Strategy&分析
個人投資家の運用の志向やニーズ、および資産の積み上がり方は、ライフステージの変容に伴って変化することが、これまでの調査で明らになっています。また、個人投資家や金融機関の営業員へのインタビューなどを踏まえた結果、資産の積み上がり方に関して複数のルートが見えてきました。それを図式化したものが図表①です。
金融資産1億~2億円程度までは、比較的多様な個人が存在します。資産形成の経緯としても、堅実な給与所得の積立・貯蓄、資産形成の成功(特定銘柄の値上がりや堅実な積立など)、相続・承継など多様なストーリーがうかがい知れます。
他方、金融資産が4億円を超えたあたりから、資産形成の経緯やストーリーは限定的になっており、富裕層親世代からの多額の相続・承継、特定アセット(個別株、投機性金融商品など)の急激な値上がりが目立ちました。超富裕層(金融資産10億円以上)になると、資産家・創業一家や事業売却によるニューリッチなどに収れんしていく様子が見られます。
金融機関としても、この「断層」を明確に意識した上で顧客開拓やチャネル設計を行うことが肝要です。一般富裕層の延長線上に超富裕層がいるわけではないため、超富裕層ビジネスを手掛ける場合は、富裕層から“育てる”という考え方よりも、潜在的な超富裕層がいるプールネットワークと接点を作り、ニーズに合ったチャネルや提供価値設計を定める必要があります。また、一般富裕層に対する提供価値を、単に超富裕層に対するものの廉価版とする考え方も不適切です。各セグメントのニーズや特徴をきちんと捉えた上で、それぞれに適切なチャネル・顧客接点・商品/サービス提供の形を考えていくべきでしょう。
図表②:各セグメントの分類条件および資産構成、運用志向の区分
注:資産構成については、比率35%以上のアセットクラスに色付け
出所:Strategy&分析
セグメントごとの主な運用志向を示したものが図表②です。
金融資産の規模が大きくなるのにつれて、現預金比率が低下する傾向が明確に現れました。また、アッパー富裕層以上になると、利用するアドバイザーの上位に税理士が入ります。資産構成の複雑性や家族への相続・承継を見越した専門的なアドバイスが、このセグメントあたりから急増することが見て取れます。他方、一般富裕層あたりまでは生命保険会社の営業員に運用アドバイスを求める人も少なくありません。打ち手としての商品のバリエーションが決して多くない中でも、保険販売ならではのライフシミュレーションなどが、顧客の悩みに訴求できている可能性が示唆されます。
アドバイザーとの接点では、半数以上が“常に”対面を求める超富裕層を除き、依然として対面を求める層はどのセグメントでも7割程度と高く、大きな違いは見られませんでした。資産規模とは異なる部分で、対面/非対面ニーズに違いがあることがうかがい知れます(職業や家族形態による違いについては後述)。
また、「非対面中心で/常に非対面で構わない」と考える層が富裕層以上にも一定存在することにも注目するべきでしょう。今後も非対面を選好する層の拡大は想定されます。リモート/デジタルチャネルは現状、効率性訴求の面で活用されがちですが、より付加価値のある打ち出し方や顧客体験の設計も重要になりそうです。
資産の増加要因については、富裕層以下では最も多かった「給与・所得の堅実な貯蓄」との回答がアッパー富裕層以上では次点でした。ここからも図表①で示した「断層」の存在が垣間見えます。
図表③-1:サブセグメントごとのニーズ・運用志向(業種別:超富裕層・アッパー富裕層の深堀り)
1)金融資産10億円以上の世帯については、10億円として平均を算出
2)世帯年収1億円以上については1億円で平均を算出
3)「資産運用 – その他」とは堅実な積立や中長期での運用成果等を指す
出所:Strategy&分析
図表③-2:サブセグメントごとのニーズ・運用志向(職業別:一般富裕層の深掘り―前半年代―)
1)金融資産10億円以上の世帯については、10億円として平均を算出
2)世帯年収1億円以上については1億円で平均を算出
3)「資産運用 – その他」とは堅実な積立や中長期での運用成果等を指す
出所:Strategy&分析
図表③-3:サブセグメントごとのニーズ・運用志向(職業別:一般富裕層の深掘り―後半年代―)
1)金融資産10億円以上の世帯については、10億円として平均を算出
2)世帯年収1億円以上については1億円で平均を算出
3)「資産運用 – その他」とは堅実な積立や中長期での運用成果等を指す
出所:Strategy&分析
図表②で示したセグメントの中を、さらに職業別に分けて特徴を比べたのが図表③の1~3です。
超富裕層・アッパー富裕層の中身を見ると、経営者・役員の比率が圧倒的に高くなっています。ファミリー企業で資産を代々承継してきているケースのほか、高い給与や自社株の積み重ねで資産を形成した大企業の役員が目立ちました。
開業医や独立した弁護士など企業オーナーの顔を持つ専門職セグメントと経営者セグメントは、独立系証券の利用者が多く運用志向が似ています。多忙な上、資産構成が複雑なことから、アドバイザーを頼る比率が相対的に高く、“対面”への強いこだわりも見えました。経営者だからこそ、「私的な資産と職務の事情を切り分けづらくクローズドな環境で対話をしたい」「多忙な中で情報取得から判断までを素早く行うには会って話した方が早い」という事情が見て取れます。
自営・自由業や会社員・公務員は、そもそもアッパー富裕層における出現率が高くありません。その中で富を形成した一部の層は、特定の保有銘柄が値上がりしたケースが多く、バブル経済を経て投機的な運用志向を持つ人も一定数存在していました。堅実な給与貯蓄でアッパー富裕層に至るのは相当難しく、「断層」が横たわっていることが分かります。
一般富裕層に目を移すと、会社員・公務員やリタイア層の割合が高まりました。資産の増加要因を見ると、1億~2億円程度であれば堅実な給与の積み上げで十分達成可能なことが分かります。
堅実に貯蓄しながら金融機関にアドバイスを仰ぐタイプだけでなく、アッパー富裕層でも見られたような、長い投資経験を経て自身の投資判断に自信を持ち、アドバイザーを信用せず、(時に過度な)積極運用をしているタイプも混在していることがヒアリングから明らかになりました。いずれの場合も金融機関(アドバイザー)との接点自体は有しているため、それぞれのタイプに適した形でアドバイザーとしてアプローチする必要があります。
アッパー富裕層とは異なり、一般富裕層における専門職(医師・士業)は雇われ人が目立ち、高収入の会社員・高度プロフェッショナルと運用志向が似ているのが特徴です。運用において特段の工夫を講じずに富裕層となった人も多く存在します。リスク許容の見直しや運用方針に対する丁寧なアドバイスやニーズ喚起が刺さり得る投資家が、比較的多いと考えられます。
リタイア層は、経営者・役員層に次いで大きいサブセグメントです。ポートフォリオを見ると個別株比率が高く、積極運用を続ける投資家も少なくありません。給与収入が減ったとは言え、これまでに築いた億を超える資産による余裕と、長年の投資経験を経て身についた積極運用スタイルを継続している様子が見られました。資産形成の増加要因からも垣間見えるように、過去のバブル経済で急激な資産の値上がりを経験したことで、積極運用によるうまみが忘れられない投資家も多いようです。
現役時代(~65歳)と比較すると、資産保全の意識からアドバイザーを利用する比率は高くはなりますが、商品情報など限られた場面での利用にとどまるケースが多く、運用方針やポートフォリオの見直しにまで至っていないケースが少なくありません。“プレ”リタイア層(~50代会社員など)を含め、金融機関やアドバイザーがリタイア層の利益拡大に貢献できることは多いのではないでしょうか。
どの職業にも該当しないセグメント(専業主夫/婦や学生など)では、相続・承継により資産形成した層が相応に存在します。その他の層に比して金融機関、特にメガバンクとの関係を密にしながら、税金面や次世代への相続を見据えたアドバイスを得ている特徴が見られました。
図表④:サブセグメントごとのニーズ・運用志向(家族形態別:一般富裕層の家族形態による違い)
1)金融資産10億円以上の世帯については、10億円として平均を算出
2)世帯年収1億円以上については1億円で平均を算出
3)「資産運用 – その他」とは堅実な積立や中長期での運用成果等を指す
出所:Strategy&分析
一般富裕層について、家族構成別に見たものが図表④です。ファミリー(子ども独立済みを含む)の方が教育費や将来の資金需要を見据えた資産設計に対するアドバイスニーズが強く、実際にアドバイザー利用率も高い結果となっています。実際に話を聞くと、資産形成の目的として家族や子どもを挙げる人は多く、資産形成による目標(金額・年数)を具体的にイメージしながらのアドバイスを受け入れやすい状態にあることが分かります。
子なし夫婦においては、主に銀行・信託銀行を取引先とし、現預金を中心に資産を保有する傾向が見られました。子育てへの支出がない分、それほど運用に積極的にならずとも富裕層になれた層が一定数存在しているようです。
子なしシングルは世帯年収が相対的に低いながらも、投信や個別株といったリスク性資産の保有比率が高く、積極的な運用により資産形成・維持を図っています。具体的に何を達成したいというイメージが無くとも、その時に取れるリスクに応じた資産形成を行っている模様です。
図表⑤:地域による「富裕層」ペルソナの違い(地域別の一般富裕層 既婚セグメントの分布)
出所:Strategy&分析
50代以上の一般富裕層(既婚セグメント)について、居住地による属性・構成の違いや資産構成の違いを図表⑤で表しました。
地方では首都圏よりも比較的給与が低くても富裕層となっている比率が高くなっています。主な要因としては、低物価によってキャッシュフローの流出が抑えられ資産の積み上げスピードが速くなることが挙げられます。推論の域を出ませんが、代々引き継いできた資産を相続するなど、給与所得以外の資産流入が大きいことも考えられます。
結論を出すにはより詳細な分析が必要ですが、同じ一般富裕層といえども居住地によって資産形成のストーリーや内訳は異なる可能性があり、生活環境の違いが運用の志向やニーズに与える影響もあると推測されます。
本調査では、職業・家族形態・地域性(居住地)によって、投資のニーズや運用志向に明確な違いが表れることが示されました。こうした顧客データを定期的に収集し、企画部門(管制機能)によって顧客セグメンテーションに生かすことを金融機関に推奨します。セグメントごとの顧客の有望度と提案スタイルの適合性を図りながら、各金融機関にとって最適な顧客セグメント別営業モデルを構築することが重要です。
その際には、顧客データをいかにして取得するか(3rd partyデータの利用、営業員による顧客との対話、アプリなどデジタル顧客接点の活用など)と、顧客体験の設計が肝となるでしょう。
Strategy&では、今回調査した軸以外でも、運用の志向やニーズに影響を及ぼし得る因子などを引き続き調査します。今回公表したデータは単年調査の結果ですが、継続的に同様の調査を行うことで、経年変化のトレンドや背景を分析し、金融機関や社会への影響を論じる考えです。
今回公開したデータ以外にも、さまざまな投資家の属性やニーズを分析した結果をStrategy&は有しています。(アフルエント層の分析、金融機関別の使い分け、デジタルニーズなど)詳細に関するご共有・協議については、本ページ下部の担当者までご連絡ください。
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