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気候非常事態は、人類を取り巻く数多くの「長期的な危機」の一つですが、これに対処するには、全てのセクターが力を結集しなければなりません。これは、とりわけ英国の地方自治体について言えることです。およそ4分の3の地方自治体が脱炭素化へのコミットメントを表明しています。その内容は英国の2050年目標を超えるものですが、実現は容易ではありません。いくつかの地方自治体の関係者は取材に対し、それぞれの自治体が設定した目標については、達成までのハードルが相当高いことを認識していると明かしています。
地方自治体の公共サービスに関する旧来のモデルでは、気候非常事態に適切に対処することはできません。このようなサービスは、住民に供給できるものでも、住民のために行うものでもありません。さらに、自治体には、地域システム全体にこうしたサービスを提供する資金も権限もありません。そのため、職員や市民から選出される公職者が、従前とは異なるアプローチで状況を変えていく必要があります。
このような状況において、「コミュニティパラダイム」*1への移行が重要となります。コミュニティの潜在的な力を活用して、公共サービスや地域の変革を推進することが非常に効果的です。実際、英国の気候変動委員会(Climate Change Committee)は、英国における温室効果ガスの排出削減の62%が行動変容の状況次第であることを明らかにしています*2。
気候非常事態に対処するに当たってコミュニティの参画を得るために、地方自治体が行動インサイトを応用できる機会を示していきます。
本記事には、PwC英国が同国の状況をまとめた内容が掲載されています。記事の中で焦点を当てている行動経済学は、日本においても、気候変動への対応のほか、よりサステナブルな社会への移行に向けて活用されてきました。
日本で気候変動に対応するために行動経済学が活用されている事例として、以下のようなものがあります。
リサイクル促進の介入(ナッジ*3):地方自治体がリサイクルステーションでの表示を工夫し、視覚的な情報を通じて住民のリサイクル行動を改善しました。これは、選択の簡便性を高めることで、行動を促進するナッジを活用したもので、住民が自然に正しい選択をする環境を整えることで、特別な努力をしなくてもリサイクル率を向上させます。
エコポイント制度のインセンティブ効果:省エネ家電を購入する消費者に対して、購入時にエコポイントを付与し、他の買い物に利用できる仕組み。この制度によって、消費者は省エネ家電を選択することで、電気代を削減できるだけでなく、付与されたポイントでさらなる経済的価値が得られる。これにより、消費者による環境への優しい選択を強化し、行動を自然に誘導することが可能になります。具体的には、電気代の削減によって、家電の購入にかかる費用が何年で回収できるかといった経済的利点が直接のインセンティブとなり、消費者は自ら進んで省エネ製品を選びやすくなります。
エネルギー使用の可視化:地方自治体や企業が、家庭やオフィスにおけるエネルギー消費データをリアルタイムで提供するシステムを導入。消費者は自分のエネルギー使用量を詳細に確認でき、無駄を減らすための行動を促進します。これにより、個々の消費者は、自身の消費パターンを意識し、自然と効率的なエネルギー使用を心がけるようになります。行動経済学の観点から、他者との使用量の比較機能も導入されており、節約行動をさらに推進します。これにより、消費者は日々の生活でエネルギーを効率的に使用する習慣を形成するため、各家庭などで無駄を減らす行動が広がっています。
このように、人の行動インサイトに着目し、インセンティブやデフォルト効果をうまく活用し介入を設計することで、大きなコストをかけずに成果を出すことが可能になります。
年々、夏の暑さが増し、気候変動の問題はますます急を要する課題となってきています。より効果的・効率的な対処方法として行動インサイトを活用して、政府、地方自治体、民間企業が協力し、国家を挙げて気候変動に立ち向かっていくことが必要です。PwC Japanグループは、この取り組みをサポートしたいと考えています。
*1 コミュニティパラダイム、New Local
*2 気候変動委員会(2020年)「英国における排出削減~議会への経過報告」
*3 ナッジとは、「軽くひじでつつく」という意味の行動経済学の考え方。選択を強制せず、人々が望ましい行動を取るよう促す軽い干渉を指します。自然な行動変化を促す戦略として使用されます。
※本コンテンツは、Using Behavioural Insights to harness the power of communities in tackling the climate emergencyを翻訳したものにPwC日本独自の内容を追加したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。