欧州の車載電池リサイクル市場

経済合理性のある持続可能なビジネス

主な調査結果

  • 1
    欧州車載電池市場 自動車の電動化率が高まり、2030年に欧州のセル生産量が約900GWhに増加すれば、2040年には欧州のリサイクル市場に約6,000ktの退役電池が流通することが見込まれます。
  • 2
    規制による後押し アジア各国の規制に倣い、欧州は2023年に規制体系を改定しました。特に2031年以降はリサイクル効率を70%に引き上げることを義務付けています。
  • 3
    電池リサイクル技術 着実なテクノロジーの進歩とサプライチェーンの構築のもと、ハブ拠点にて40ktを集中処理、スポーク拠点にて10ktを分散処理するリサイクル体制により最大50%のコストダウンが期待できます。
  • 4
    2030年における欧州の車載電池リサイクル市場展望 欧州の車載電池リサイクル市場には、2030年までに20億ユーロ超が投資される見通しです。しかし、2035年に向けてさらなる市場の成長に対応するためには70億ユーロの追加投資が必要と見込まれます。
  • 5
    考察と提言 車載電池リサイクルは規制のハードルを乗り越え、約80億ユーロ規模の市場へと成長するとともに電池価格低下ももたらすことで、経済合理性のあるサステナブルなビジネスとなる可能性があります。

2030年には小型乗用車の約40%がBEV(バッテリー式電気自動車)プラットフォームになり、車載電池需要は3.4TWhを超える見込みです。


世界のバッテリー需要 (GWh)

2025
1,500
2030
3,400
2035
5,300
2040
6,500
中国
ヨーロッパ
アメリカ、カナダ、メキシコ
世界のその他の地域

2040年には、欧州の電池リサイクルは2030年比で10倍に増加すると見込まれます。当初の主なリサイクル品はギガファクトリーのスクラップ品が対象と考えられます。

2030年から2040年にかけて、リサイクル可能資源量は10倍に増加することが予想されます。2030年以降の急増の背景は、モビリティ電動化第一波の車両が耐用年数を迎えるためです。


リサイクル可能な材料の開発(単位:GWh、kt)

2023
5
(~ 10 kt)
2025
20
(~ 70 kt)
2030
100
(~ 460 kt)
2035
475
(~ 2,650 kt)
2040
1,000
(~ 5,950 kt)

2023年から2030年にかけては、ギガファクトリーからのスクラップ品を中心に市場流通すると考えられます。その後、リサイクル資源に占めるスクラップ品の比率は大きく下がり、2040年には市場の10%弱にまで縮小すると予想されます。2040年には約5,950ktの退役電池が主に市場に流通すると考えられます。


リサイクル可能な材料の分布 (GWh、kt)

2023
5
(~ 10 kt)
%
%
2025
20
(~ 70 kt)
%
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2030
100
(~ 460 kt)
%
%
2035
475
(~ 2,650 kt)
%
%
2040
1,000
(~ 5,950 kt)
%
%
スクラップ
EoLバッテリー

市場展望

  • リサイクル材が大きく貢献
    2035年には、リサイクル材が電池セル生産用Li、Ni、Coの最大30%を占める可能性があります。わずかなブレはあるとしても、欧州のリサイクル目標は達成される見通しです。
  • 経済的モチベーションが増強の原動力に
    処理能力増強と廃棄電池の増加に伴い、リサイクルビジネスは全てのバリューチェーン・ステークホルダーに経済合理性のある事業環境と、持続可能な利益を生み出せるようになります。
  • リサイクルがCAM価格を押し下げる可能性
    より多くのリサイクル可能資源が低コストで入手できるようになれば、正極活物質(CAM)価格が最大20%下がり、電池価格への好影響が期待できます。これにより、電動化とリサイクル市場の受け入れがさらに進むと考えられます。

この分析は、アーヘン工科大学の「PEM:Production Engineering of E-Mobility Components」教授陣と共同で行ったものです。執筆者のAchim Kampker教授、Christian Offermanns博士、Merlin Frank氏、Timon Elliger氏に感謝の意を表します。

※本コンテンツは、European battery recycling market analysisを翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。

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北川 友彦

北川 友彦

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

桑原 永尚

桑原 永尚

シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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