データから価値を創造する:データの価値を最大化する戦略的なアプローチ

2020-01-17

データから価値を創造する

先進諸国の経済は、モノの生産からサービスなど無形資産の提供へと移行し続けている。そのため、かつてないほど情報の重要性が高まっている。データアナリティクスやAI、ビッグデータをどのように活用すべきか、またそれらの技術への投資をどのように実行したらよいか、多くの企業が頭を悩ませている。

しかし、戦略立案の段階から、データありきで考えるのは得策ではないだろう。まず、自社事業のどこで、どのように価値を創造していきたいのかを考え、その上でデータの活用について検討すべきである。

多くの企業が、データ資産に多額の投資を検討している。しかし適切な戦略もなく投資が決まっているならば、それは本末転倒であり、将来性のある正しい意思決定ではない可能性がある。

そうしたリスクを低減させるために、私たちはデータ事業を成功させるための確かなアプローチを開発した。

まず考えるべきことは「提供価値」であり、データはその後である

データに投資を行う場合、自社がどれだけデータを保有しているか、データの出所はどこでどのように使えるか、を最初に考えがちである。しかし、このようなことに長い時間を費やす必要はない。まず行うべきは、自社が競合よりも大きな価値を創造できそうなのは何かを明らかにすることである。そして、その価値創造を実現するにはどのようなデータ資産が必要かを突き詰めることだ。ここまで来て初めて、データ活用に必要な投資について明確に理解できるようになる。

データへの投資は、事業戦略に沿ったものでなくてはならない。また「予測モデル」や「AI」などの華々しいテクノロジーに投資する前に、データの整合性確認やシステム連携など、地味だが重要な「前処理」にも予算をつぎ込む必要がある。

神話のウソ

新聞の見出しなどでは、データは「新たな石油」だと言われているが、実際はそうではない。データが石油だとすると、データの大半は見えないところに隠れ、汚染されており、処理も難しく、精製して使える形にするためのコストが高すぎるということになる。

また石油業界では「スーパーメジャー」と呼ばれる国際巨大資本や国営企業が覇権を握っているが、データに関しては、Amazon、Google、Apple、Facebookといった「スーパーメジャー」は存在するものの、中国以外の国に国営企業は存在しない。迅速に採掘や取引を行う独立系の事業者もほとんど存在しない。特に競争の激しい「データ業界」にうまく適合する、あるいは参入の準備が整っている企業はそれほど多くはないだろう。石油の用途は幅広く、取引は自由で、世界中から常に高い需要があるが、これはデータとはまったく異なる。データは石油とは違い、経済学で言う「非競合性」があるため、ひとつの財を複数の使用者が何度でも使える。そのため、データの価値は限定的であることが多い。

企業が保有しているデータは自社にわずかな価値しかもたらさないし、社外に対してはほとんど無価値である。したがって、データは企業内に眠る宝の山で、わずかなコストをかければ高い利益率を生み出す収入源になるということはない。また、投資パフォーマンスの向上を狙ったヘッジファンドが声をかけてくることもないだろう。

私たちのクライアントのケースを見ていると、ビッグデータやアナリティクス、AI、リッチコンテンツといった、一見儲かりそうでかつ新しい技術領域で、これまでにない斬新なビジネスモデルや収益源を創出することに期待をかけ、胸を躍らせる場面をしばしば目にする。しかしうまくいくケースはごくわずかで、期待はずれに終わることのほうが多い。最初は大きなチャンスがあるように思えても、高いコストをかけ、目的が不明確で非効率な計画を実施した結果、そこにあるのは実現が難しい小さな機会だけ、ということもよくある。結局、同じ失敗を繰り返したくないという恐怖だけが残る。

これに対して、データの真の価値を理解し、その使い方を戦略的に考えるための努力を惜しまなかった企業は、適切な投資を実行できる。コストに見合った成果が期待できないような高額な技術導入計画に手を出すこともない。

戦略に基づいた堅実なプロセスに従えば、データと事業戦略を確実に連携させることができるようになる。さらに、手元にどんなデータがあり、そのデータが誰にとっていかなる価値を持つのかも明確になる。そして、データの収益化に関して現実的な目標を立て、テストを実施して問題が起きそうな点を修正すれば、成功は確かなものになる。あやふやな仮説をもとに自社のデータ価値を測るのではなく、十分な根拠に基づき、事業と関連させながら明確に把握できるのである。その根拠とするため、既存顧客および潜在顧客のためにどのようにデータを活用できるか、データそれ自体を商品化できるか、そして最も重要なことだが、既存事業の強化に役立つか、といった点を考慮する。これこそが、データの真の価値である。

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PDFファイル内の執筆者の所属・肩書きは、レポート執筆時のものです。

"Creating Value from Data: Why you need to take a strategic approach to maximise the value of your data" by Neil Hampson, Adam Sutton, March 8, 2019

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樋崎 充

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パートナー, PwCコンサルティング合同会社

神馬 秀貴

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