{{item.title}}
{{item.text}}
PDFをダウンロード - {{item.damSize}}
{{item.title}}
{{item.text}}
2017-10-06
力強いデジタルリーダーの必要性を認識する企業が増加している。PwCの戦略コンサルティングを担うStrategy&は2016年最高デジタル責任者(Chief Digital Officer : CDO)の調査において、世界の大手公開企業2,500社のCDO職の設置状況について分析を実施した1。その結果、これら企業の19%がデジタル戦略を率いる役員を指名していることがわかった。その割合は2015年の調査2ではわずか6%だったが、近年、増加の勢いが増している。最新の調査で確認されたデジタルリーダーの60%が2015年以降に指名されている。
この傾向は、多くの企業がデジタル能力の高度化に向かっていることを反映している。私たちの経験からも、この段階では通常、経営陣はデジタル化に向けたリーダーシップの必要性に焦点を当てるようになるものだ。事業の初期においては、さまざまな事業部門や管理部門がデジタル化の取り組みに弾みをつけようと、手当たり次第に実験やパイロットプログラムを行う。しかしこのような分散的なアプローチは、企業がデジタル化の恩恵をつかみとるために一貫した包括的な戦略の設計を決定すると、もはや不十分になるのだ。
デジタル戦略の導入に当たって、CDOという新たな役員は得てしていくつかの大きな障壁に直面するものだ。一例としては、一元的な監督が行われないまま、大きな組織の中でその場しのぎのデジタル対策が行われてしまうこと、変化に抵抗しようとする伝統的な企業文化、必要な能力を持った人材の不足、熱意ある取り組みを頓挫させてしまう恐れのある古いシステムや構造などが挙げられる。あなたの会社にとって適切なCDO3とは、これらの課題に取り組むための経歴と経験を持つ人物だ。どのようなスキルが必要かは企業によって異なるだろう。しかし組織、ガバナンス、ケイパビリティ、ビジネスプロセス、基盤となる技術アーキテクチャ、企業文化の中に根本的な変化が根づく段階まで、その企業のデジタル改革を推し進めることを可能にするスキルを備えている必要がある。
「最高デジタル責任者」という役職名は、企業、あるいは事業部門のデジタル化への取り組みを遂行する任務を負っている役員を指している。この職位は最高デジタル責任者、最高技術責任者(Chief Technology Officer : CTO)、最高情報責任者(Chief Information Officer : CIO)をはじめとするCxO(Chief=最高責任者の肩書を持つ幹部)のひとりかもしれない。しかし、CDOではなく、ヴァイスプレジデントやデジタルオペレーション部門のディレクターがデジタル改革の取り組みを率いる企業もあるだろう。さまざまな業界において、後者の職位が担っている企業が多く見受けられた。CxOのメンバーとなっているCDOの割合は2015年から大きくは変わっておらず、いまだ40%前後で推移している(図表1参照)。
その他にも変化の見られなかった側面がある。一例を挙げると、今年の調査でも北米や欧州に拠点を置く企業をはじめとして、大手企業の方がCDOのポジションを置いている例が多く、また、CDOの大部分が依然として男性であった(2016年時点で84%)。しかし今日のCDOには大きな特徴が見られた。2015年の調査では、通信/メディア/エンターテインメント、食品/飲料、運輸/旅行といった消費者に直接向きあう業界においてカスタマーエクスペリエンスやコネクティビティ、ビジネスモデルの向上に取り組む中で、デジタルリーダーの指名を行っている企業が最も多く見られた。しかし今年の調査ではこの状況に変化があり、他の業界、特に保険および金融は、顧客対応型の取り組みの活発化を目指しているだけでなく、社内のオペレーションの完全デジタル化にも取り組んでいる(図表2参照)。
また、新たに指名されたデジタルリーダーの経歴にも変化が見られた。 2015年の調査ではCDOの14%がテクノロジー分野出身者であった。しかし2016年の調査ではこの割合が2倍以上の32%へと拡大した。一方、マーケティング、セールス、カスタマーサービスの経歴を持つCDOの割合は53%から39%へと縮小した。さらに、CxOのメンバーとなっているテクノロジー分野出身のCDOの割合は41%とさらに高く、その一方でマーケティング/営業分野出身のCDOの割合は33%であった。
この動向は企業が直面している環境と一致している。例を挙げると、一部の企業では、顧客に直接対応する活動に限定して、あるいは一事業部門ずつデジタル化を進めようと考えているようだ。このような企業にとって理想的なCDOとは、特定の業界におけるセールスやマーケティングについて豊富な経験を持つ人物、あるいは特定の技術分野における専門能力を持つ人物だろう。また、改革により大きな意欲を持っている企業の場合、デジタル化における顧客対応やオペレーションの側面に関する経歴だけではなく、大規模な変化の指揮を執る経験を有するデジタルリーダーを探すことになるだろう。現在では、デジタル化の成熟期に達している企業が増えており、これら企業には旧式なITアーキテクチャと新たなデジタルアプリケーション、双方の複雑さに対応できるCDOが必要だろう。そのためには、テクノロジーにおける力強い経歴だけではなく、テクノロジーへの大型投資の承認や新たなシステムの導入に絡む、得てして厄介な政治的課題やガバナンスの課題にも取り組んだ経験を持つ役員が必要だ。
Strategy&が調査の中でインタビューしたCDOの間にも、これらの違いが見受けられた。彼らの経験、組織図における彼らの位置づけ、さらには彼らが負っている任務もさまざまだ。しかし、デジタル化を推し進める中で彼らが直面している課題は同じなのだ。
レポートの続きは、PDFファイルをダウンロードしてご覧いただけます。
PDFファイル内の執筆者の所属・肩書きは、レポート執筆時のものです。
The New Class of Digital Leaders, strategy+business June 21, 2017。
1 CDO調査は、以下の手法により調査を実施。 ブルームバーグのデータに基づく2016年7月1日現在で全世界の時価総額トップ2,500社のCDOの有無、バックグラウンドなどの分析(2015年までは1,500社を対象としていたものを拡大)。CDOの有無を調査するために、企業役員データベース(Avention、BoardEx)、記者発表(Factiva)、各社ホームページ、ビジネス向けSNS(LinkedIn、Xing)その他のインターネット調査を実施。
2 『デジタル化への変革のリーダー : 2015年CDO(最高デジタル責任者)についての調査』、Strategy&、2016年2月
3 『企業の未来とCDO—最高デジタル賓任者の5つの類型』、Strategy&、2016年9月
最新の調査で確認されたデジタルリーダーの60%が2015年以降に指名されている