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チーフ・サステナビリティ・オフィサー(CSO)のエンパワーメント

信頼と競争力を維持するカギ

サステナビリティ(持続可能性)は、かつてはビジネス上の重要な意思決定とは切り離され、安全や評判に関わる企業のリスクを最小化することが主たる課題でした。しかし、それはすでに過去の話です。現在、世界中の企業が、環境・社会・ガバナンス(ESG)の問題をますます重視するようになっています。とはいえ、エグゼクティブの多くは、どのような行動を取るべきか確信が持てないでいます。当社は企業取締役を対象に毎年調査を実施していますが、その最新調査において、リーダーたちは、ESG問題への対応はあまりに複雑で、対処すべき問題もあまりに包括的であるため、どこから手を付ければよいのか分からないと語っています。

そこで、チーフ・サステナビリティ・オフィサー(CSO)の手腕の見せ所です。今回の調査では、CSOの組織内での役割が大きくなってきており、コンプライアンスだけでなく、人事、戦略、さらには財務においても、CSOの意見が価値あるものとなってきている状況について調べました。

CSOを設けること自体が「特効薬」となるわけではありませんが、一流のCSOであれば、ESG分野の点と点を結びつけ、サステナビリティ・トランスフォーメーションを一気に加速させて大きな影響をもたらすことができます。今後もESGがビジネスの中心に据えられる中で、CSOの役割は間違いなく高まっていくでしょう。本レポートでは、当社が行った調査の結果を分析し、トップクラスのCSOの専門的意見を参考にしながら、CSOの現状について整理するとともに、ESGトランスフォーメーションを加速するESGガバナンス体制の設計について提言します。

CSOの役割の現状

ビジネス界はESGによってどのように変わりつつあるのか、そして、企業はこのような変化をどのように管理しているのか――この2つについて理解を深めるため、上場企業1,640社のCSOの役割を調査しました。また、CSOという役職を設けている企業の割合、CSOの経歴、組織構造の中でのCSOの位置付けについても調査しました。

CSOという役職を正式に設けている企業の割合は3分の1弱でした。一方、CSOという役職が全くない企業は全体の5分の1でした。調査の結果、CSOという役職を設けているものの、その役割や企業ヒエラルキーにおける地位から見て、サステナビリティに関わる権限が限定的である企業がかなりの数に上ることが明らかになりました。例えば、サステナビリティそのものに重点を置くのではなく、企業の社会的責任(CSR)または衛生・安全・環境(HSE)といった役割の中でサステナビリティに取り組む、サステナビリティ・オフィサーなどです。

現時点では、取締役会と十分な関わりがあるCSOはごく一握りしかいないと思われます。CSOの約半数は、組織構造の中で経営幹部レベルよりも2階級以上下位に位置付けられており、サステナビリティ・トランスフォーメーションを牽引するだけの影響力はありません。そこで、本レポートでは、権限が限定的であることを表すため、これらのエグゼクティブやマネージャーを「CSOライト(CSO light)」と分類しました。


CSO割合(地域別)

北米
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欧州
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南米
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アフリカ
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アジア太平洋
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中東
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CSOがいない
ライトCSO
アクティブCSO

出典:Refinitiv、Strategy&による調査

このような分類に基づくと、約半数の企業のCSOは、限定的な権限しか負託されていません。CSOという役職を正式に設けている割合が最も高いのは、消費財セクターに属する企業です。これは、食品セクターやアパレルセクターにおいては、メディアやソーシャルメディアでサステナビリティの問題に焦点を当てていることを踏まえると、驚くにはあたりません。


CSOの割合(業種別)

消費財
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化学
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石油・ガス
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保険
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%
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自動車
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メディア・エンターテインメント
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製薬・健康
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銀行
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エンジニアリング
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Eコマース
%
%
%
CSOがいない
ライトCSO
アクティブCSO

出典:Refinitiv、Strategy&による調査

化学セクターや石油・ガスセクターの企業も、CSOという役職を正式に設けている割合が高くなっています。これらのセクターの事業に対し、投資家や規制者、政府、メディア、NGOなどが、いかに厳しくESGを精査しているかが分かります。CSOという役職を正式に設けている割合が最も低いのは、エンジニアリングセクターやeコマースセクターでした。

そうしたCSOの専門能力の差に変化が起きようとしています。2020年および2021年、全世界で任命されたCSOの数が2019年から際立って増加しました。このような傾向は、気候変動や人種・ジェンダー平等といった問題が投資家やCEOの意思決定に影響を及ぼし始めた2017年にはもう始まっていました。コロナ禍によって、そうした傾向に拍車がかかり、企業は将来のESG課題に向けた準備をスタート。新規雇用や社内での昇進を通してサステナビリティに関する専門知識を構築しています。

Sustainability manager of a global fashion company

「CSOが特に早い段階で重視すべきは、サステナビリティがいかにビジネスに役立つかを明確にすることです。『ビジネスかサステナビリティか』ではなく、『ビジネスもサステナビリティも』なのです。そのことへの理解を醸成し、サステナビリティが価値の向上に結びつくという認識を確立することが、決定的に重要です。また、いかにしてサステナビリティと自社のブランドストーリーとを結びつけ、ストーリーの強化を図るかという点にも取り組む必要があります。サステナビリティ自体は差別化要因ではありません。そのため、独自のサステナビリティのストーリーを生み出す必要があります」

世界的なファッション企業のサステナビリティマネージャー

今後の展望

現在、CSOが率いるサステナビリティチームの多くは、知見や知識の共有を通じて、社内のサステナビリティを高めるよう後押ししています。しかし、組織内の抵抗が弱まり、ESGが全ての部署に影響を及ぼし始めるにつれて、他の部署や他のエグゼクティブも、それぞれにサステナビリティに関する専門知識を蓄えるようになります。そうなると、中央のESGチームやCSOの役割も変化し、その仕事の一部が他の部署と重複する可能性も起こってきます。しかし、そのような状態に至るには、まだ道のりは長いのです。ESGがビジネス上の全ての意思決定に組み込まれ、CSOが自らの任務の成功によって不要になるまでには、まだ時間がかかります。その間に何回もCOPが開催され、さらに何人ものCSOが任命されるでしょう。

調査方法

CSO調査は、CSOの任命状況の確認、広範な企業調査、エグゼクティブに対する詳細なヒアリングに基づいています。

まず、英語の報道や会社発表を調査し、2011年以降に任命された全世界のCSOの追跡を行いました。その分析結果に基づいて、1年当たりのCSO任命数を出し、特定されたCSOについて追加調査を実施しました。特に、現在の雇用主(雇用主が変わっている場合)、各人の職歴・学歴、CSOが連携している企業内の部署(財務、調達、取締役会など)について調べました。以上の方法によって、150人以上のCSOを特定し、カテゴリー化することができました。

本分析に対するBridget Jackson、Dima Sayess、Samer Al Chikhani、Wineke Haagsma、Ruirui Zong-Rühe、Meike Hegge、Thomas Hocksの助言と貢献に感謝します。

主要メンバー

服部 真

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

メールアドレス

坂野 俊哉

シニア・エグゼクティブ・アドバイザー, PwC Japan合同会社

メールアドレス

磯貝 友紀

パートナー, PwCサステナビリティ合同会社

メールアドレス