商用車のeReadiness

トラックの電動化をいかに促進するか

これからが正念場

道路輸送の電動化は必要不可欠であり、サステナビリティ目標の達成に大きな役割を果たすことになります。輸送事業者は商用車両の電動化に前向きであり、商用車メーカーも車両の電動化に多大な投資を行ってきましたが、それらを魅力的な製品、サービス、ソリューションという形で持続可能な収益源に転換させていくことには依然として苦戦しています。

PwC Strategy&は、欧州商用車市場の需要サイド(フリート事業者)と供給サイド(商用車メーカー)の両方から、eReadiness(電動化に対する取り組み状況)への市場の視点を把握するために本調査を実施しました。この調査結果は、商用車メーカーが短~中期的な事業性を確保し勝てる戦略を策定するための一助となります。

主な調査結果

フリート事業者は商用車両の電動化に前向きです。しかし、魅力的な製品・サービスおよび使用経験の不足が導入の障壁となっています。

電動化はプロダクトアウトでは進展しません。フリート事業者は、一貫したニーズに基づくカスタマイズされた車両とサービス/ソリューションを求めています。

「新規参入者」に対抗するため、従来の商用車メーカーは、ブランド力を高め、顧客との直接的な交流を可能とする直接販売を強化する必要があります。

フリート事業者は、電動トラック/バスの車両ライフサイクル全体をカバーする包括的なソリューションを明確に求めています。商用車メーカーは、顧客のニーズを積極的に取り込む必要があります。

デジタルサービスの設計・提供では、典型的な落とし穴を回避するため、商用車メーカーに全く新しいスキルセットが必要になります。

商用車メーカーへの提言

電動化を推進するために、商用車メーカーは5つの領域において勝てるプランを策定する必要があります。

  • 1提供価値を明確にする

    電動トラック/バス関連の製品・サービスに対するフリート事業者の前向きな意向を十分に活用するため、真に顧客中心の提案を定義する

  • 2顧客のハードルを下げる

    十分な実体験を提供することで顧客の運用上の懸念を軽減し、魅力的なサービスと十分な経済メリットを提示して顧客の購入プロセスをサポートする

  • 3顧客との距離を縮める

    物理的タッチポイントとデジタルタッチポイント間の移行を可能な限りシームレスにし、オンラインによる顧客への直接的な体験で従来の販売を補完する

  • 4ソリューション設計者になる

    ハードウェア、ソフトウェア、サービスを組み合わせて、自社が目指す電動化ソリューション領域を(再)定義する。コア業務以外の活動への参入は大きな競争優位性をもたらす可能性があるが、そのためには新しい組織的ケイパビリティを備える必要がある

  • 5「デジタル」に精通する

    パートナーとのエコシステムの中でデジタルビジネスモデルを設計・実装する際に生じる固有の課題を理解し、戦略やサービス設計、内部のオペレーションなどに関する典型的な落とし穴を回避するスキルを身につける

フリート事業者への提言

排出量ゼロ車両への移行は、適切に対応すればフリート事業者にとって有望な機会となります。

  • 1積極的に行動する

    車両の電動化への分岐点が急速に近づいている中、関連する課題と機会を十分に理解することで、競合他社に先んじた行動をとる

  • 2段階的なアプローチをとる

    適切な方法をとらなかった場合、ガソリン車やディーゼル車から電気自動車への移行は、資本的支出の増加とインフラの制約によって車両の効率性に影響を与え、ビジネスに悪影響を及ぼす可能性がある

  • 3経済評価する

    運用コスト、TCO(総保有コスト)、残存価値、充電インフラに対する現在および将来の影響を理解することは、今後のビジネスの成功に大きな違いをもたらす

  • 4シームレスに統合する

    電動車両を効率的に運用するためには、車両データとインフラデータを1つにした新しいデジタルソリューションを、既存のITシステムと運用プロセスに統合する必要がある

  • 5エコシステムと連携する

    車両やインフラ資産だけでなく、これらのサポートに必要な新しい外部パートナー(商用車メーカー、エネルギー会社、充電ポイント事業者などとのパートナーシップや契約を含む)についても検討する必要がある

本レポートの執筆に当たっては、Cornelia Deppner氏にもご協力をいただきました。

本調査について

PwC Strategy&は、欧州商用車市場の需要サイド(フリート事業者)と供給サイド(商用車メーカー)の両方から、eReadiness(電動化に対する取り組み状況)に関する市場の視点を把握するために本調査を実施しました。その目的は、商用車メーカーが短~中期的な事業性を確保し勝てる戦略を策定するための一助となることです。

  • 商用車メーカー(30社)とフリート事業者(30社)から成るバランスのとれた60社の参加者にインタビューを実施しました。
  • フリート事業者は、小型トラック、中型トラック、大型トラックおよびバスのセグメントで大規模車両を有する交通・物流セクターの事業者を対象としました。
  • 商用車メーカーの調査回答者は、トラック・バスの大手メーカー主要部門としました。
  • 体系的なアンケートを用いて、主要部門(役員、営業、アフターセールス、マーケティングなど)への電話インタビューを2021年8~11月に実施しました。
  • 補完的に業界専門家への詳細なインタビューも実施しました。

※本コンテンツは、Commercial Vehicle eReadinessを翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。

お問い合わせ先

北川 友彦

北川 友彦

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

阿部 健太郎

阿部 健太郎

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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