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2017-07-07
技術の進化や市場の質的変化によって、自動車業界は世界レベルでかつてない激動の時代を迎えている。本レポートでは、世界の自動車業界における5つの鍵となるトレンドを俯瞰した後に、自動車メーカーにとっての9つの戦いのパターンを提言する。(北川 友彦)
世界の自動車産業はひと時もとどまることを知らず、新しいモデルやデザインが登場するたびに自動車の形状や性能は変わっていく。とはいえ、自動車の歴史の中で、今日ほど変化の著しい時代はあまりない。今後5年から10年の間に、次に挙げる5つの流れが主流となり、自動車企業の幹部は、それぞれの流れに特有の課題に向き合わなければならなくなるだろう。
ここに挙げたような流れは、近い将来、自動車産業に起こりうる変化のほんの断片にすぎない。ここには、現代の自動車産業に固有の、日常的な多くの課題は含まれていない。だがそういう課題は、時間とともにますます厄介なものになってくる。例えば、従来の内燃エンジンの性能向上が求められる。消費者のデザインの好みを予測しなければならなくなる。複雑性の管理や価格管理も必要になる。さらには、量産車セグメントに新たな競合企業が参入するという脅威もある。
このように複雑な状況の中では、自動車メーカーがすべての需要に応えたくても無理である。技術的なオプション、市場、社会や人口動態的な変化が、とにかく多すぎて対応しきれない。さらに競争環境が激化するにつれ、多くの点で平均的というだけではもはや十分ではなくなる。企業はリスクを冒してでも、自社のターゲットとして選んだ顧客が本当に重視する事柄で傑出した存在になる必要がある。自動車メーカー各社は、それぞれ独自の顧客のために、どのように付加価値を提供するつもりなのかを明確にしなければならない。言い換えれば、自信をもって自社の「戦いのパターン1」を選ぶということだ。さらに、自動車メーカーは、この価値提供をどこよりも優れた方法で実現し、常に成功を収められるようにするためには、自社特有のケイパビリティ(自社独自のプロセス、ツール、知識、スキル、組織)のうちどれを使うのかを決める必要がある。
自社特有のケイパビリティ、強力な戦いのパターン、そして適切な製品やサービスが整ったコヒーレンス(一貫性)のあるシステムで武装すれば、自動車メーカーは持続的に利益を成長させていくことができる。こうしたコヒーレンスのあるシステムは、そう簡単にまねできるものではなく、顧客に真の価値を与え、競合他社との差別化を図ることができる(図表1参照)。
私たちの調査によると、どの産業においても、コヒーレンスのある企業の成長率は、コヒーレンスのない企業よりも平均的に3倍もスピードが速く、2.5倍の利益を上げる傾向がある。なぜなら、コヒーレンスのある企業は、厳選した少数のケイパビリティを重視し、事業の中で顧客にとって最も重要な部分を絶えず向上させるとともに、法規制対応などの最低限必要なケイパビリティ、あるいは他社と同程度であればよいケイパビリティなど、差別化にはつながらない分野への支出を抑制しているからである(図表2参照)。
さらに、他社と差別化できるケイパビリティに熱心に取り組む企業は、従業員の仕事への打ち込み方も深く、企業の最も重要な分野に最高の人材を集めることができる。
コヒーレンスのあるシステムは自社に際立った優位性をもたらす。しかしそのためには、企業が現在持っている強みと実際に構築可能なケイパビリティを徹底的に評価し、市場がどこへ向かっているのか、今後顧客からどのようなニーズが増えるのかについて鋭い洞察を行う必要がある。私たちの考えでは、自動車メーカーには現在、9つの典型的な戦いのパターンがあり、それぞれに必要なケイパビリティがある(今後増える可能性もある)。こうした戦いのパターンは、「伝統型」と「新興型」に分類できる。「伝統型」とは、これまで自動車産業の一部だったもの、「新興型」とは最近のテクノロジーの進化や規制の強化、顧客行動の変化によって加速してきたものである。
レポートの続きは、PDFファイルをダウンロードしてご覧いただけます。
PDFファイル内の執筆者の所属・肩書きは、レポート執筆時のものです。
"Auto industry growth strategies: Fasten your seatbelts”, March 29, 2017。
コヒーレンスのある企業は業界平均の2.5倍の利益を上げる傾向がある
1 ポール・レインワンド、チェザレ・メイナルディ、アート・クライナー共著『なぜ良い戦略が利益に結びつかないのか―高収益企業になるための5つの実践法』ダイヤモンド社ハーバード・ビジネス・レビュー、2016年