グローバル・デジタル・オペレーション調査

エンド・ツー・エンドのカスタマー・ソリューションを提供するために、業界のリーダー企業はどのように統合オペレーション・エコシステムを構築しているのでしょうか。デジタル・チャンピオンの性質を考察し、企業がデジタルリーダーに変わるための道筋を定義します。

はじめに

機械やプロセス単体の自動化であったインダストリー3.0とは異なり、インダストリー4.0はバリューチェーン上のエンド・ツー・エンドのデジタル化とデータ統合を含んでいます。つまりインダストリー4.0では、デジタル製品・サービスの提供や、連結された物的資産とバーチャル資産のオペレーション、全オペレーションと社内活動の変革・統合、パートナーシップの構築し、対顧客活動の最適化が行われるのです。

PwC Strategy&は、26カ国1,155社の製造業各社の経営陣にインタビューを行い、デジタル・オペレーションの成熟度で企業をランク付けするための指標を作成し、4つのグループ「デジタル初心者」「デジタル・フォロワー」「デジタル・イノベーター」「デジタル・チャンピオン」に分類しました。調査データから、デジタル化でリードしている企業の包括的なポートフォリオを作成し、デジタル・チャンピオンになるためには何が必要なのかを、4つの必須エコシステムのレンズを通して見極めます。

レポートPDF

ビデオ:2018年グローバル・デジタル・オペレーション調査
インダストリー4.0(英語)

デジタル・チャンピオンとは?

デジタル・チャンピオンは、デジタル化を単なる自動化とネットワーク構築ではなく、広範囲に影響を及ぼす非常に革新的なものと見ており、この点で注目に値します。

彼らはカスタマー・ソリューション、オペレーション、テクノロジー、そしてヒトの4レイヤーから成る非常に重要なビジネス・エコシステムを習得することを通じて際立っており、4つのエコシステム・レイヤーそれぞれが、企業内外で行われる活動の集合体です。これらの活動は共通するデジタルなつながりと実務内容によりグループ化されています。

デジタル・チャンピオンは、4つ全てのエコシステムにおいて自社のケイパビリティを高め、デジタル化を最大限に活用する組織環境を創り出すことで自社を差別化しています。また彼らにはスキルがあり、経営陣はデジタル化に意欲的なため、デジタル化を進める上で優位な地位にあり、調査対象とした企業のうち、デジタル・チャンピオンという称号を得たのはわずか10%でした。

カスタマー・ソリューション・エコシステム

このエコシステムは、企業が顧客や消費者に、できる限り最高の独自の製品やサービスを提示します。デジタル・チャンピオンである企業は、パーソナライゼーション、カスタマイゼーション、強化された機能、改善された物流、独創的な収益モデル、革新的なデザインやアプリケーションを通じてこれらを行います。このレイヤーには、企業が付加価値を生み出すために自社のソリューションに組み入れる外部業者も含まれます。

デジタル・チャンピオンは、各顧客に合わせたソリューションのポートフォリオとマルチチャネルでのカスタマー・インタラクションを統合することによって顧客価値を創り出しています。彼らは自社のエコシステム内での戦略やポジションを識別し、より深いネットワークを創り出すためにソリューションのポートフォリオだけではなく、複数のチャネルを通じた顧客との直接の接点や第三者を通じた接点についても、常に強化・拡大し続けているのです。

オペレーション・エコシステム

このエコシステムは、顧客に合わせたソリューションのポートフォリオを支える物理的な活動やフローを網羅し、製品開発、計画立案、調達、製造、倉庫管理、物流、サービスなどが含まれます。下請け製造業者や物流パートナー、教育機関などを含み、企業のオペレーションの一部となっている外部パートナーも、このエコシステムに含まれています。

デジタル・チャンピオンは、オペレーション・エコシステムにより、バリューチェーン全体の協調と完全な透明性を実現させています。オペレーション・エコシステムが製品開発、サプライチェーン、サービスの各分野の部門やパートナーを水平方向に連結します。優れたオペレーション・エコシステムはタクトタイムを向上させるため、特に計画立案と実行において有効です。タクトタイムとは、顧客の需要に対する生産時間が、完全に合致するように活動のペース配分を行うことです。

テクノロジー・エコシステム

このエコシステムは他のエコシステムを有効化するイネーブリング・エコシステムで、ITアーキテクチャーとインターフェース、ならびにデジタル技術をカバーし、カスタマー・ソリューション、オペレーション、ヒトの各エコシステムにおける改良やブレークスルーをけん引または後押しします。例えば、インダストリー4.0の軸となる、AI、3Dプリンター、インダストリアルIoTとセンサー、拡張現実(AR)と仮想現実(VR)、そしてロボットなどの技術が含まれます。

デジタル・チャンピオンにとっての成功の鍵は、重要なテクノロジーの採用を個別に行うのではなく、組織全体で、そして戦略的パートナーとの間で連結させるという全体的アプローチを採っている点です。今後5年間で、デジタル・チャンピオンはテクノロジーの採用によるコストの低減と効率化により大幅な利益拡大を見込んでいます。デジタル初心者が10%のコスト低減見込みであるのに対し、デジタル・チャンピオンは16%のコスト低減を見込んでいます。

ヒト・エコシステム

このエコシステムはもう一つのイネーブリング・レイヤーであり、企業の能力と文化に関わるエコシステムである。ほとんどの企業が、デジタル・トランスフォーメーションを支えるビジョン、戦略、そして文化を備えていません。デジタル・チャンピオンになってその大きな価値を実現している企業ですら十分とは言えません。このエコシステムは、デジタル・トランスフォーメーションを支えるスキル、考え方や振る舞い、関係先とスキルの調達先、そしてキャリア開発を含んでいます。

デジタル・トランスフォーメーションを支える、明確なデジタルビジョン、戦略、そして文化を持つ企業のみが、本当の意味でデジタル・トランスフォーメーションをうまく利用できます。我々がインタビューした企業の3分の2が、このビジョンを欠いていました。一方で、デジタル・チャンピオンの70%以上は、経営陣がデジタル化された未来についての明確なビジョンを持ち、組織内でのロールモデルとなっています。また、デジタル・チャンピオンはデジタル環境に適したスキルの研修や開発に大きな投資をしており、デジタル文化の構築に成功していることも分かりました。

デジタル・チャンピオンになるための青写真

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お問い合わせ先

樋崎 充

樋崎 充

Strategy Consulting Leader, PwCコンサルティング合同会社

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