R&D支出世界上位1000社のうち日本企業は支出額・企業数ともに増加

PwCの戦略コンサルティングを担うStrategy&は、2017年グローバル・イノベーション調査を実施しました。

この調査は、研究開発に多額の費用を投入した世界の上場企業のトップ1000社を「グローバル・イノベーション1000」として特定し、研究開発が企業業績に及ぼす影響等について評価を行い、高い費用対効果を生む手がかりを探るために毎年実施しているものです。

13年目となる2017年調査の結果、以下の動向が明らかになりました。

  • 2017年調査におけるR&D支出トップ1000社のR&D支出額は7,020億米ドルと、前年比3.2%増で調査開始以降最高額でした。一方で売上高は15.6兆米ドルで昨年比2.5%減でした。
  • 日本企業は171社がトップ1000社にランクイン、そのR&D支出額は合計1,070億米ドルで、R&D支出額(5.9%増)、ランクイン企業数(6社増)ともに昨年比増加となりました。
  • 産業別では、上位3位は多い順に、コンピュータ・エレクトロニクス、ヘルスケア、自動車でした。2016〜2017年のR&D支出成長率はソフトウエア・インターネットが16.1%と最も高くなりました。このまま推移すると、2018年にはソフトウエア・インターネットは自動車を抜き第3位の業界となるとみられます。また、ヘルスケアは5.9%増で2018年にはコンピュータ・エレクトロニクスを抜いて1位になると予測されます。
  • R&D支出額のランキングは下記のとおりで、2005年の調査開始後初めてハイテク企業がトップになりました。日本企業ではトヨタが11位、ホンダが19位という結果でした。

同時に世界のイノベーションリーダーへのオンライン調査を行い、その結果下記が明らかになりました。

  • 欧州、北米の企業では6割以上のリーダーが、自社のイノベーション戦略と企業戦略が「連動している」と回答する一方、日本企業は半数にとどまりました。
  • 昨今の経済ナショナリズムの影響については、自社のR&D業務に中程度から重大な影響があると答えたリーダーは52%にも上りました。日本企業では「現地採用の割合が上昇した」との回答が24.7%と、欧州(7.2%)、北米(7.9%)よりも多くなりました。

調査を担当したPwC Strategy& 米国のプリンシパルであるバリー・ヤルゼルスキは、「この一年は、研究開発にとって良い面と悪い面の両方がありました。投資額は史上最高額。一方、イノベーションと企業戦略の間の整合性が、未曾有の下落を見せた年でもありました。政治的台詞に政策が実際に影響をうけるかどうかは別として、先行きの不透明感が中長期計画に懸念を生じさせていることに疑いの余地はないでしょう」

「また、経済ナショナリズムが今後も続いたとしても、企業によるイノベーションへの投資水準が変わらないと想定されますが、グローバルなイノベーション・モデルは進化する必要があります。多くの企業において、現在は敏捷で相互依存的なネットワークであるものが、今後はもっと自律的なハブへと発展し、現地や地域市場でスペシャリストの技術者を雇用し、将来はその中で研究開発拠点を開設する形になるかもしれません。そうなった場合に、効果的なマネジメントを実現できない限り、企業は効率性を失い、高いコスト負担を強いられる可能性があります」と述べています。

Strategy&「2017年グローバル・イノベーション調査結果概要」(PDF 342KB)

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