グローバル・デジタル・オペレーション調査

エンド・ツー・エンドのカスタマー・ソリューションを提供するために、業界のリーダー企業はどのように統合オペレーション・エコシステムを構築しているのでしょうか。デジタル・チャンピオンの性質を考察し、企業がデジタルリーダーに変わるための道筋を定義します。

1155

調査に参加した製造業

26カ国

調査対象国

10%

デジタル・チャンピオン

66%

デジタル化された未来について明確なビジョンがない経営陣

はじめに

機械やプロセス単体の自動化であったインダストリー3.0とは異なり、インダストリー4.0はバリューチェーン上のエンド・ツー・エンドのデジタル化とデータ統合を含んでいます。つまりインダストリー4.0では、デジタル製品・サービスの提供や、連結された物的資産とバーチャル資産のオペレーション、全オペレーションと社内活動の変革・統合、パートナーシップの構築し、対顧客活動の最適化が行われるのです。

PwC Strategy&は、26カ国1,155社の製造業各社の経営陣にインタビューを行い、デジタル・オペレーションの成熟度で企業をランク付けするための指標を作成し、4つのグループ「デジタル初心者」「デジタル・フォロワー」「デジタル・イノベーター」「デジタル・チャンピオン」に分類しました。調査データから、デジタル化でリードしている企業の包括的なポートフォリオを作成し、デジタル・チャンピオンになるためには何が必要なのかを、4つの必須エコシステムのレンズを通して見極めます。

レポートPDF

ビデオ:2018年グローバル・デジタル・オペレーション調査
インダストリー4.0(英語)

デジタル・チャンピオンとは?

2018年グローバル・デジタル・オペレーション調査 8つの主な調査結果

デジタル・チャンピオンは、デジタル化を単なる自動化とネットワーク構築ではなく、広範囲に影響を及ぼす非常に革新的なものと見ており、この点で注目に値します。

彼らはカスタマー・ソリューション、オペレーション、テクノロジー、そしてヒトの4レイヤーから成る非常に重要なビジネス・エコシステムを習得することを通じて際立っており、4つのエコシステム・レイヤーそれぞれが、企業内外で行われる活動の集合体です。これらの活動は共通するデジタルなつながりと実務内容によりグループ化されています。

デジタル・チャンピオンは、4つ全てのエコシステムにおいて自社のケイパビリティを高め、デジタル化を最大限に活用する組織環境を創り出すことで自社を差別化しています。また彼らにはスキルがあり、経営陣はデジタル化に意欲的なため、デジタル化を進める上で優位な地位にあり、調査対象とした企業のうち、デジタル・チャンピオンという称号を得たのはわずか10%でした。

カスタマー・ソリューション・エコシステム

このエコシステムは、企業が顧客や消費者に、できる限り最高の独自の製品やサービスを提示します。デジタル・チャンピオンである企業は、パーソナライゼーション、カスタマイゼーション、強化された機能、改善された物流、独創的な収益モデル、革新的なデザインやアプリケーションを通じてこれらを行います。このレイヤーには、企業が付加価値を生み出すために自社のソリューションに組み入れる外部業者も含まれます。

デジタル・チャンピオンは、各顧客に合わせたソリューションのポートフォリオとマルチチャネルでのカスタマー・インタラクションを統合することによって顧客価値を創り出しています。彼らは自社のエコシステム内での戦略やポジションを識別し、より深いネットワークを創り出すためにソリューションのポートフォリオだけではなく、複数のチャネルを通じた顧客との直接の接点や第三者を通じた接点についても、常に強化・拡大し続けているのです。

カスタマー・ソリューション・エコシステムの概要

オペレーション・エコシステム

オペレーション・エコシステムの概要

このエコシステムは、顧客に合わせたソリューションのポートフォリオを支える物理的な活動やフローを網羅し、製品開発、計画立案、調達、製造、倉庫管理、物流、サービスなどが含まれます。下請け製造業者や物流パートナー、教育機関などを含み、企業のオペレーションの一部となっている外部パートナーも、このエコシステムに含まれています。

デジタル・チャンピオンは、オペレーション・エコシステムにより、バリューチェーン全体の協調と完全な透明性を実現させています。オペレーション・エコシステムが製品開発、サプライチェーン、サービスの各分野の部門やパートナーを水平方向に連結します。優れたオペレーション・エコシステムはタクトタイムを向上させるため、特に計画立案と実行において有効です。タクトタイムとは、顧客の需要に対する生産時間が、完全に合致するように活動のペース配分を行うことです。

テクノロジー・エコシステム

このエコシステムは他のエコシステムを有効化するイネーブリング・エコシステムで、ITアーキテクチャーとインターフェース、ならびにデジタル技術をカバーし、カスタマー・ソリューション、オペレーション、ヒトの各エコシステムにおける改良やブレークスルーをけん引または後押しします。例えば、インダストリー4.0の軸となる、AI、3Dプリンター、インダストリアルIoTとセンサー、拡張現実(AR)と仮想現実(VR)、そしてロボットなどの技術が含まれます。

デジタル・チャンピオンにとっての成功の鍵は、重要なテクノロジーの採用を個別に行うのではなく、組織全体で、そして戦略的パートナーとの間で連結させるという全体的アプローチを採っている点です。今後5年間で、デジタル・チャンピオンはテクノロジーの採用によるコストの低減と効率化により大幅な利益拡大を見込んでいます。デジタル初心者が10%のコスト低減見込みであるのに対し、デジタル・チャンピオンは16%のコスト低減を見込んでいます。

テクノロジー・エコシステムの概要

ヒト・エコシステム

ヒト・エコシステムの概要

このエコシステムはもう一つのイネーブリング・レイヤーであり、企業の能力と文化に関わるエコシステムである。ほとんどの企業が、デジタル・トランスフォーメーションを支えるビジョン、戦略、そして文化を備えていません。デジタル・チャンピオンになってその大きな価値を実現している企業ですら十分とは言えません。このエコシステムは、デジタル・トランスフォーメーションを支えるスキル、考え方や振る舞い、関係先とスキルの調達先、そしてキャリア開発を含んでいます。

デジタル・トランスフォーメーションを支える、明確なデジタルビジョン、戦略、そして文化を持つ企業のみが、本当の意味でデジタル・トランスフォーメーションをうまく利用できます。我々がインタビューした企業の3分の2が、このビジョンを欠いていました。一方で、デジタル・チャンピオンの70%以上は、経営陣がデジタル化された未来についての明確なビジョンを持ち、組織内でのロールモデルとなっています。また、デジタル・チャンピオンはデジタル環境に適したスキルの研修や開発に大きな投資をしており、デジタル文化の構築に成功していることも分かりました。

デジタル・チャンピオンになるための青写真

社内のエコシステム評価を実施し、可能なことを実行する方法を検討する

最初のステップでは、現在企業が置かれている状況を明確にします。一般的に、これが変革への第一歩と言えます。企業は社内評価を行い、うまくデジタル化された未来に向けて、可能なことを実行する方法を探ります。経営陣は、市場の動向、競合他社の動き、顧客の期待、進化するエコシステム、規制の変化、そしてテクノロジーの進化を熟視し、自社の顧客への提供価値のあり方、オペレーションとテクノロジーのケイパビリティ、そして従業員のスキルの状態をまず見極めます。自社の成長目標や業績目標を達成した実績だけではなく、欠点も分析しなければなりません。

エコシステム・ビジョンと提供価値のあり方を定義する

最初のステップで実施した分析の結果に基づき、経営陣が自社の目指すものを描いたエコシステム・ビジョンを作成します。このステップでは、会社として製品とサービスをどのように位置づけ、顧客にどのような提供価値を提供し、これらの個別のソリューションを多チャネルでの顧客接点を通じてどのように提供するかを決定します。

統合エコシステムの概念と戦略的パートナーシップ・モデルを作成する

このステップでは、経営陣は4つのエコシステム全てを網羅するエコシステム概念をデザインします。まず、カスタマー・ソリューション・エコシステムに注目し、最適なパートナーになり得るのは誰か、新たなケイパビリティを開発するか購入するか、どのケイパビリティは社内にあるか、どのケイパビリティがパートナーシップなどを通じて構築する必要があるかを特定します。これらの選択が終われば、そこから導き出される要件を満たすオペレーション・エコシステムを作ります。その後、その2つのエコシステムを可能にする、テクノロジーとヒトのエコシステムを構築します。

エコシステムのガバナンス、投資、意思決定機関を立ち上げる

エコシステムの設計と導入を繰り返し行う前に、そのかじ取りを行う明確な「エコシステム・ガバナンス」プロセスを構築しなければなりません。このガバナンスプロセスの指揮監督と実行の責任は経営陣が持ち、優先順位と主なマイルストーンの設定、設計と導入の結果のレビューと承認、投資判断を行います。

エコシステムのケイパビリティを、デザインと導入を反復しながら構築する

組織の目標の明確な定義とエコシステムのデザインを青写真として、各エコシステムを、純粋にこれらの目標を達成するための道筋として作成します。ここでは主に2つの活動が行われます。
1つ目は、スプリントで行われるエコシステムケイパビリティの設計と導入の反復です。迅速に、流動的に、プロジェクトベースかつチームで行われるこれらの活動は、必要がなくなった時点で解散されます。これは、未来のカスタマー・ソリューション、オペレーション、テクノロジー、そしてヒトの各エコシステムを構築する上での主たる取り組みです。
2つ目の主な活動は、各スプリントを実施した後、シームレスな統合を支援するために、カスタマー・ソリューション、オペレーション、テクノロジー、そしてヒトの各エコシステムの成果を統合し、まとめることです。

完全統合エコシステムの価値を手に入れ、さらなる拡大のために再投資する

4つのエコシステムが完成したら、組織は新たなバリューチェーンを最大限活用するため、戦略上の必須事項を実施します。経営陣は、新しい仕事の仕方やプロセスを監視し、デジタル化が各エコシステムで改善や効率化につながり、外部パートナーが社内のケイパビリティや部門、強化された顧客価値を届ける取り組みと円滑に統合されていることを確認します。4つのエコシステム・モデルの継続的な成長に向けて再投資を行えば、エコシステムの進化に伴い成熟度をさらに深められます。これが、デジタル・チャンピオンになるための、またはデジタル・チャンピオンとしての地位を強化するためのプロセスです。

デジタル・チャンピオンになるための青写真

日本における担当者

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