デジタル化への変革のリーダー: 2015年度CDO(最高デジタル責任者)についての調査

2016-2-01

日本語版に向けて(唐木 明子)

PwCの戦略コンサルティングサービスを担うStrategy&が初めて行ったCDO(Chief DigitalOfficer、最高デジタル責任者)調査の結果、対象となった日本企業において、CDO職を設置している企業はなかった。CDOとは、国内で話題になりつつあるチーフ・データ・オフィサーではない。デジタル社会への自社の変革への対応をより広く担う、チーフ・デジタル・オフィサー、である。詳細は本文にあるが、CDOとは、自社のデジタル化に対応する戦略の立案推進、データ・システム対応、そして、それに必須となるケイパビリティの構築に責任を持つという、相当に大きなミッションを持つ役職である。

誤解を避けるために明記するが、本調査の結果は、日本企業がデジタル化をないがしろにしていると示唆するものではない。CDOをおいていない企業にはいくつかの類型がある。(A)デジタル化に既に相応に対応している企業、(B)デジタル化対応の重要性と困難さがきわめて深刻に認識されている企業、そして(C)デジタル化の波に乗り遅れている企業。日本企業はというと、各社デジタル化を急務として取り組みを進めている。本調査で対象としているCDOは、日本企業においてはその重要性から、CEOが直接手掛けているケースが多いのではないだろうか。

デジタル化において、国内企業も海外企業も共通して言えるのは、事業規模や組織の規模が大きければ大きいほど、チャレンジが大きいということである。新興のインターネット企業ははじめからデジタル化を前提に事業を組み立てているため、「変革」の必要は少ない。一方で、長い伝統を持つ大企業においては長年かけて蓄積された組織、文化、システム、データなどにより、相当の変革を覚悟しない限り、デジタル化の推進は困難である。

一方、日本企業独自とも思われる難しさもいくつかあげられる。たとえば、(1)属人的な能力への依存度合いの高さ、(2)「失敗」が許されない文化、(3)育成システムにおけるジェネラリストの育成である。

まず、日本企業はとかく期待の高さの裏返しとして現場を「甘やかしてはいけない」と本部があえて現場の考える余地を残すケースが多い。デジタル化の一つの流れは、データ示唆に従ったオペレーションに連なり、それは現場力と相矛盾するようにも見える。また、現場での判断材料を多く与えるためのデジタル化と定義づけた場合ですら、現場の目利き力育成に反しかねないという懸念が呈される。

また、デジタル化は、データのデジタル化、集約化、さらには、システムの再構築を伴うものである。日本のシステムは非常に堅固で確実さが求められる。システム障害で企業の経営陣が社会に向けてお詫びする姿をニュースで見ることもままある。システムと連なるデジタル化は極めてハードルが高いということになる。

最後のジェネラリスト主義は、短期的なデジタル化に影響を及ぼす、必要なデータの収集、クレンジング、分析と示唆出しに習熟している人材が少なくなるためである。一方、データの使い方において多様な経験を有する人材が多くいることで多面的な見方ができるということは有利であろう。

かように難しさがあるため、国内企業のデジタル化の推進においては、以下の3つが取り組みを比較的容易に進められるポイントと思われる。(1)意識、体制、働き方すべてが変わり得る大きな変革を 行うべくトップダウンの取り組みとする、(2)必要なケイパビリティを有する社外人材と社内を知り尽くした人材を巧妙に組み合わせて取り組みを推進する、(3)小さくクイックウィンから初めてモメンタムをつくる。

日本企業が、この大きなデジタル化を克服し、先頭に立ち、世界の人々の暮らしをよりよくするための変革の先頭に立つことを願ってやまない。

結論

デジタル化の進行は、企業における事業の運営方法、顧客や取引先、仕入先とのやり取りに使うテクノロジーに関して、特異な変化を引き起こしている。最近まで企業各社は、テクノロジーと事業の間に、真に統合されたシナジー的関係を構築できずに苦闘していた。しかし今、ビッグデータからソーシャルネットワーク、進化した携帯通信までに及ぶ、あらゆる種類のテクノロジーが勢揃いして、全ての企業に、デジタルな将来に向けた準備を整えることを強制している。バイエル社のフェデラー氏は言う。「デジタル化は、最近、選択肢の一つとなったばかりですが、今は、もはや選択肢の一つではありません。それは避けて通れない命令であり、私たち全員が対応せざるを得ないのです。」

しかし、CDOの行く手には困難な道が待ち受けている。CDOはしばしば、凝り固まった企業文化と交渉し、トップ経営層からの継続的支援を勝ち取るために戦う一方、多くの社員の活動が短期の財務目標達成だけに捧げられる中、新たなデジタル戦略の創出と、完全なデジタル移行のためには避けられない事業運営上の課題とのバランスを取っていかねばならない。

この新たな前線での戦いにCDOが勝利するためには、適応力を持つこと、そして事業目標と必要な組織および企業文化の改革にフォーカスすることが必要である。また、企業においてデジタル化が業務に完全かつ着実に浸透した暁には、CDOはその役割を終えることも忘れてはならない。デジタル化の完了後にCDOが直面するのは、彼らの現職と同じくらい、柔軟で定義されていない未来なのである。

別表:グローバルCDO調査の方法論

Strategy&は、フィナンシャル・タイムズによる時価総額で世界上位100社、およびワンソース/アヴェンションによる売上高上位の私有・上場企業の中から、世界上位の上場・私有企業1,500社を選出した。時価総額と売上高のデータは、2013-2014年度のものである。調査員はその後、企業の報告書や記録、そのほかのメディア報道など公に入手可能な情報を調査した。

調査は、アジア太平洋、欧州、中東・北アフリカ、北南米の25の業界を対象とした。

加えて、以下のCDOを対象に、2015年5月および6月に電話でインデプス・インタビューを行った:コリンヌ・アヴェリンス氏(アクゾーノーベルの塗料部門CDO)、クリス・カーティン氏(VisaのCDO)、ジェシカ・フェデラー氏(バイエルのデジタル開発部長)、パトリック・ホフステッター氏(ルノーのCDO)

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PDFファイル内の執筆者の所属・肩書きは、レポート執筆時のものです。

"Adapt, disrupt, transform, disappear: The 2015 Chief Digital Officer Study", December 13, 2015

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