未来型ショッピング時代の到来

未来型ショッピング時代の到来―2015年度世界オムニチャネル小売指数調査

日本語版に向けて(唐木 明子)

オムニチャネルとは、商品の購買の各プロセスにおいて、消費者・顧客が情報源となるタッチポイント(コミュニケーションチャネル)および、販売のためのタッチポイント(セールスチャネル)を柔軟に組み合わせて活用しうるように設計された、統合的なチャネルである。当然、その組み合わせのあり方は多数存在しえて、現状はその利便性や、実現のしやすさから、お取り寄せ購入(オンラインで商品を購入し、店頭で受け取り)、試着予約(オンラインで商品を選択し、店頭で確認の上購入)、エンドレスアイル(店舗で商品を確認購入し、店舗で商品の配送を手配することにより受け取り)、ショールーミング(店舗で商品を確認し、オンラインで購入)などいくつかの代表的な事例が提示されつつある段階である(下参照)。

オムニチャネルの取組みの全体像

PwCの戦略コンサルティングサービスを担うStrategy&では、世界の各国各業種のオムニチャネル化の傾向を把握し、その背景を考察するために世界の19の国地域、9つの小売りセグメントにおいて調査を行い、オムニチャネル化度合を指数化した。
日本は、指数で40、対象19の国と地域で第8位という結果である。より具体的にみると、米国、英国、オーストラリアといった国々に加え、中国も日本より高い状況、一方で、インド、ブラジルはもとより、フランス、イタリア、ドイツといった西欧諸国よりは高いという結果になっている。また、日本は40であるが、最もオムニチャネル化指数が高い米国ですら50であり、日本とさほど差が開いているようにも思えない。
この結果をどう受け止めるべきであろうか?

まず第一に、消費者・顧客の「オムニチャネル化」に、サービス商品提供側が追いついていないことがあげられる。
消費者はいち早くネットと実店舗を柔軟に使い分け、使いこなしている。日本国内でも「ネットショッピング」が一般的になり、小売りの最大手が次々とオムニチャネル戦略を打ち出すなど、オムニチャネル化を早いペースで進展させようとしている。一方で、企業のオムニチャネルの推進は、全世界的に試行錯誤しているのが現状である。世界最大のECプレーヤーでも、実店舗の展開は今後の取り組みである。また、世界最大の店舗プレーヤーも、ECの勝ちパターンを探っているところである。

次に、米英と比較すると日本企業はその遅れが大きいということが言える。
国内でも多くの企業が、オムニチャネル化の推進に苦労している。実際に、米英と異なり、日本ではいわゆる従来型の大企業のECはいまだに実力を発揮しきれていない。小売企業にとっては、店舗を通じてモノを販売するためのプロセスと体制とは大きく異なる仕組みを構築する必要がある。メーカーにとっては、卸や小売りを介さずに直接消費者に対峙するビジネスを一から組み立てる必要がある。いずれも、極めて大きなチャレンジであり、大きな方針変換の決断が必要である。製造から小売り、顧客までの流通において各々の関係当事者が繊細な調和をもって役割分担を割り当てられている中で、既存の事業に悪影響を及ぼさずに前提を崩すのは、特に難易度が高い。
ではこのままの状態で進むのであろうか。
そうは思えない。消費者・顧客が変化している以上、対応しない企業は勝者にはなりえない。さらに、国内の流通の改革はオムニチャネルに並行する形で既に進展している。小売り企業が大規模化し、メーカー主導の流通から、小売り主導の流通に変革しつつある。多くの業種において、卸はその役割を見直し始めており、メーカーはより密接に小売と連携して消費者・顧客の理解と、取組を進めようとしている。欧米の先進企業がそうしたように、消費者や顧客の現状を把握し、分析し、予測し、検証する具体的な仕組みの設計に取組む日本企業も存在する。

オムニチャネルは、コミュニケーションとセールスそれぞれのチャネルを、単に任意に組み合わせることではない。消費者・顧客が何を求め、どのように行動しているのか、その意識や行動の現実をファクトベースで把握、理解し、反応していく取り組みなのである。その意味で、オムニチャネルは、顧客中心、生活者中心の認識の表裏一体をなすものである。

別表:世界オムニチャネル小売指数調査方法

オムニチャネル小売指数調査は、19の国・地域、および9つの小売セグメントにおけるオムニチャネル小売業の成熟度、普及度、成功度を測るために設計された。この指数は、4つの異なる基準を評価することによって求めた。

  1. 消費者行動 特定の国の消費者が、既にオムニチャネル的な方法で小売購買を行っている度合い。例:ウェブtoストア、またはストアto ウェブ。得点データは、国別および小売セグメント別の結果を表示している。0-100点の間の点数で評価され、最終的な指数の40%に反映される。(データ出所:PwC Total Retail Study)
  2. デジタル化度 販売チャネルのデジタル化度。この数値は、特定の国および小売セグメントにおける、インターネットおよび携帯経由の買い物の割合を表す。0-100点の間の点数で評価され、最終的な指数の20%に反映される。 (データ出所:ユーロモニター)
  3. オムニチャネルの成長性 インターネットと携帯を経由した小売業の成長性。この数値は、伊2012-2016年の間の、インターネットと携帯が小売業売上全体に占める割合の年平均成長率(CAGR)予測である。0-100点の間の点数で評価され、最終的な指数の20%に反映される。(データ出所:ユーロモニター)
  4. インフラ 特定国におけるオムニチャネル機器とサービスの普及率。この測定値は、4つのサブ測定値によって構成される(ブロードバンドが開通した世帯の割合+携帯普及率+スマホ普及率+タブレット普及率およびそれぞれのユーザーの人口に占める割合)
    デジタル化度は、これら4つのサブ測定値を平均した値として0-100点の間の点数として求められ、最終的な指数の20%に反映される。 (データ出所:PwC グローバル エンタテイメント&メディア アウトルック)

本分析は2015年に、2014年度のデータに基づいて行われた。指数は、9つの小売セグメントの数値に基づいて評価された。①消費者向け電機・家庭用電化製品、②衣料・フットウェア(スポーツ用品/アウトドアを含む)、③メディア製品、④家庭・インテリア用品、⑤パーソナルなアクセサリーとアイウェア、⑥DIY/日曜大工、⑦食料品、従来の⑧玩具・ゲーム、⑨美容・パーソナルケア(消費者向けヘルスケア製品を含む)。
本調査では、以下の19の国・地域におけるオムニチャネル活動について調べた。米国、英国、オーストラリア、デンマーク、カナダ、中国、ベルギー、日本、中東、フランス、イタリア、ドイツ、ロシア、スイス、チリ、トルコ、インド、南アフリカ、ブラジル(順序はランキング通り)。各国の得点は、全ての小売セグメント全体の得点を加重せず単純平均した点数である。

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PDFファイル内の執筆者の所属・肩書きは、レポート執筆時のものです。

"The 2015 Global Omnichannel Retail Index: The future of shopping has arrived", November 16, 2015.

  1. “Total Retail 2015: Retailers and the Age of Disruption: PwC’s Annual Global Total Retail Consumer Survey,” PwC, Feb. 2015.
  2. Eeva Haaramo, “Nordic Retailers Get Physical to Combat International Digital Giants,” July 3, 2015.