Kohri Shinichiro
郡 信一郎 氏

※本内容は、社長在任時に作成されたものです。

現在まで
郡氏は2004年4月にデルに入社し、製品マーケティングの本部長として、コンシューマー向けから法人向けまで全てのPC製品の製品マーケティングを担当(世界全体では5割前後ほどの事業規模)。元来、経営にかかわるキャリア志向を持っていたこともあり、その後、公共営業本部長、執行役員、米国デル社エグゼクティブ・ディレクター、北アジア地域公共事業本部長を歴任し、2011年2月に営業統括本部長、同年7月にはデル株式会社の代表取締役社長に就任した。
代表取締役社長として常に意識していることは、IT企業に必要とされる短期的な業務遂行に加え、本社とは別に日本デル社としての中期的戦略を設定することと、その戦略の実現と推進力を高めるために社内でのリソースをいかに一つにまとめるかという2点。また、日本の代表者として、本社に担当地域市場の魅力、実績も含めた可能性と今後の成長性を伝えることや、グローバル企業としてのスケールメリットを活用する製品の統一性とローカル特有の課題解決に必要な調整を行うことが重要な役割であるといいます。

ブーズ・アンド・カンパニーへの入社まで
郡氏は、1991年にタフツ大学工学部を卒業後、横河メディカルシステム(現GEヘルスケア)に入社。エンジニアとして機構設計部に所属し、2年目からの2年間で異なる事業を約半年ごとに異動するGEの社内プログラムに抜擢され、日本のエンジニア、アメリカ本社のエンジニア、日本のマーケティングを経て、その中で最も興味を持ったマーケティングを担当することになりました。
GEには合計6年勤めた後、ハーバード大学でMBAを取得。この頃GEがメーカーからサービス会社に変革しようとしていることに直面したこともあり、サービスに特化したビジネスを実現したいと考え、1998年にブーズ・アレン・アンド・ハミルトン(現ブーズ・アンド・カンパニー)のサンフランシスコ オフィスにアソシエイトとして入社。2年間にわたりICT企業を含む様々な業界のクライアントに対してコンサルティング業務を経験しました。

ブーズ・アンド・カンパニーでの経験は、現在のお仕事の礎として生かされていますか?具体的に教えてください。
郡氏: はい。非常に役立ったのは、問題解決力です。マネジメントをすれば問題の認識は誰にでもできますが、それだけでは解決に至りません。例えば、誰かがチャレンジしたけれど解決できずに放置していた問題に対して何らかの答えを出す必要がある時に、自分なりに仮説を立て、解決方法を導き出すといった方法はまさにブーズで学びました。仮説を持ってそれを検証するというのはコンサルティングの基本です。特に何らかのフレームワークで問題を整理するのは非常に重要なことと言えます。問題を整理する過程では優先順位をつけて一番高いものから解決するという当たり前が確実に問題解決に繋がるというのを徹底的にたたき込まれました。また、例えば30秒、1分間という限られた時間にCXOの視点で物事を説明できるよう常に整理をしておくということも身につけました。当時から実践してきたことは現在においても生きており、実際に今社内でも同じことを伝えています。こういった点からも、ブーズでの経験は実に素晴らしかったと言えます。感謝しています。
コンサルティングと事業で異なるのは、コンサルティングはプロジェクト期間中に最高の答えを出せばいいのですが、事業は日々その中でできる最高の答えを作り続ける必要があります。そうすると、コンサルティングほど100パーセント正しい答えではないかもしれないけれど、今ある情報を整理して一番優先順位の高い問題を確定し、それを今考えられる最高の答えで実践しないといけない。ここにおいても、コンサルティングで学んだ、いかに情報を整理するかというところは非常に役立っているし、今後も役立ち続けるでしょう。

プロジェクトやご経験などで思い出に残っていることを教えて下さい
郡氏: プロジェクトの長さにかかわらず、すべてが密度の高い、良い経験として身になりました。コンサルタントとしての一番の達成感はこちらの提案をクライアントが実践した結果、数ヵ月、数年後に事業が成功したということだと思います。その点で、結果において貢献度合いが大きかったという達成感は北米のeコマース会社の日本進出のプロジェクトが挙げられます。ブーズでのキャリア終盤であったため、クライアントにとってよりスキルフルに役割が果たせたと思いますし、結果としてクライアントが大きな成功を期した印象深いプロジェクトでした。
また、コンサルティング会社特有の優秀な方が集結している環境で過ごす日々は私自身にとって非常に刺激的でした。MBA取得時もそれに近い環境でしたが、それを上回るほど優秀な人が集まっているのがコンサルティング会社であり、そうした人々と議論を交わした毎日がとても良い想い出です。

若いコンサルタントに一言アドバイスをお願いします
郡氏: 一つは自分なりの意見、”Point of View”を持つことです。コンサルタントとしてはもちろん、社会人として活躍するうえでも、どこかでその人なりの意見を求められる。それをなるべく早い段階で訓練するのは、その方のキャリアにおいて役立つと思うので、既に有している方はそれをもっと強めることを、持ってないという方はそれを持つように意識することをお勧めします。自分なりの意見はクライアント、上司、部下とあらゆる方向に対する自分自身の付加価値となるからです。これはコンサルタントだけが求められているスキルではなく、社会人としてどの役割においても有効なケイパビリティとなります。できない理由を並べる人はどんなに頭がよくても事業にとって全くプラスとはなりません。日常業務においても、戦略的なより大きい話においても、何故できなかったのか、こうしたらもっとベターな結果が得られるのではないか、というように、常に自分なりの意見を持つことが重要なのです。それをチームで議論し合うことによって、一人が考えるよりも遥かに良い答えが導き出されるのです。今の仕事でいうと、お客様は「デルならうちの問題どうやって解決してくれるのか」ということを期待しています。お客様に「PC何台ほしいですか」と聞きに行くような営業に価値はないと考えています。例えば「失礼は承知ですが、私共から見たらPCの数多すぎるのではないかと思います」といった本音の意見を聞きたいというお客様が大半であり、こうした意見はコンサルタントだけが必要なスキルではなく、どの役割においても生きてくると思います。
もう一つはコンサルティングのように高いレベルの知的チャレンジを得られる場は多くないと思うので、それを楽しんで欲しいと思います。コンサルティングという仕事が与えてくれる一番の魅力は知的チャレンジにあります。世界でも優秀な仲間たちと、誰も答えを見出せなかった問題に対して答えを出すということを楽しめる場所であると思います。それを徹底的に楽しむということこそ、コンサルティングキャリアを最も有意義にする秘訣だと思います。

これからのキャリア・チャレンジについてお聞かせ下さい
郡氏: 今後の中期的なキャリアとしては、他の国で同じ役割を担うこと、また、いずれは大きな役割にも挑戦したいと思います。そのためにも日本専門家というよりは、どんな地域のどんなビジネスであれ、成功に導けるような経営スキルを身につけるべく自己開発していきたいと思います。
これまで経験を重ねたGEとブーズが国籍を問わない実力勝負であったことに影響を受けたこともありますし、自分の能力を試すなら、今後は日本だけではなく海外の広い土俵で今後も勝負していきたいと考えています。