Jun Kawakami
川上 潤 氏

現在まで
川上氏は、87年に東京大学経済学部を卒業後、ブーズ・アレン・・ハミルトン(現Strategy&)東京オフィスに入社。5年間コンサルティングに従事したのち、94年にノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院にてMBAを取得。その後ニューヨークオフィスを経て東京オフィスに戻り、シニア・アソシエイトとして様々な業界を対象にコンサルティング活動を行いました。
97年にStrategy&卒業後、同4月に日本ゼネラル・エレクトリックの企画開発部長に就任し、M&Aと事業開発の分野でエネルギーやメディア企業などの合併を中心に様々な案件を手掛けました。そこで航空機エンジンの買収の案件をまとめたことから、99年にGEアビエーションの航空機エンジン・サービス部門北アジア地域に異動。航空機エンジンのサービス事業の立ち上げを手掛け、部品を単に販売するというそれまでのビジネスから、ライフサイクルでメンテナンスなどもすべて管理する長期プログラムを構築。2003年にGEメディカル・システム・インターナショナル・サービス部門のセールス&マーケティング担当ゼネラルマネジャーに就任し、GEのヘルスケア事業部門でのキャリアをスタート、04年GE横河メディカルシステム(現GEヘルスケア・ジャパン)常務取締役、09年取締役副社長、11年6月に社長兼CEOに就任。GEヘルスケア・ジャパンは、グローバル企業の現地法人としては珍しく、開発・製造から営業・サービスまで全て一貫して日本で行う事業を展開しており、それをすべて管理しています。

社長としてのチャレンジを教えて下さい
川上氏: 日本は世界上位の大きい市場ではあるものの、成長率では新興国市場には及ばない、製造では人件費などコスト面での競争力を失っているという状況の中で、日本なりの戦略をつくり、グローバルにおける新しい立ち位置を作っていくということが一番のチャレンジです。いまだどの国も経験したことのない本格的な超高齢社会への対応を迫られる日本から、時代の流れを先取りした新しい製品やビジネス・モデルのイノベーションを世界に発信することを目標に事業を手掛けています。加えて、日本の開発の強みである、製品小型化または省エネ化技術は、新興国市場、特に東南アジアでは大きなチャンスが見いだせると期待しています。また、お客様に新たな課題解決を提供し、ビジネスの成長曲線を継続的に次の高いレベルに上げるため、社員のイノベーションに対する意識改革にも力を入れています。具体的には、これまでのような製品・テクノロジー別ではなく、疾病ごとのソリューションを提供できる組織・チームづくりやマーケティングに取り組み、次の成長のカーブを生み出し続けています。
このように、将来のビジネス展開や会社の方向性を社員に明確に示していくことは経営トップが果たすべき重要な役割だと考えています。

弊社での経験は、現在のお仕事の礎として生かされていますか?具体的に教えてください
川上氏:まず、まず、ブーズ(現Strategy&)東京オフィスにいるときに徹底的に身に付けたのが、ビジネスのエコノミック・モデルをつくることです。直感的に「これはいける」「これは危ない」というセンスも必要ですが、継続的に利益が上がり、再投資をして持続的に回っていくようにするためには、何よりも仮説を立てて立証する作業は不可欠で、そのためのスキルが必須になります。そうしたスキルをスマートに使えて、きちんと木を見て森を見たうえでビジネス・モデルをつくる能力、これを徹底的にたたき込まれたのは大きな財産です。これは、GEに入ってからも基盤としてずっと役立ちましたし、それがあったからGEで徹底されるPLマネジメントもすぐに理解でき、大きな武器になりました。
二点目は、特にアメリカのような実力で評価される世界では、プロとしての一芸があれば認められてやっていけるという自信を持てたことです。MBAを取得した後、ブーズ(現Strategy&)のニューヨークオフィスに入りました。これまでとは異なる環境で仕事を始めるにあたって自分の強みを提供して認めてもらわなければならない、そこで一芸あることがその後の評価を左右する。それが私の場合、前述の東京オフィスで習得したエコノミック・モデリングのスキルでした。その能力が高く評価され、その後も多くのコンサルティング・プロジェクトで起用されるようになり、自信となりました。
三点目は、コンサルティングの優れたパートナーというのは、相手の経営者からリーダーとして信頼を得ている相談役でもあるということを学び、コンサルタントも事業も最終的には一緒なんだと理解できたことです。これはのちにGEに移るきっかけのひとつにもなりました。

プロジェクトやご経験などで思い出に残っていることを教えて下さい
川上氏: エコノミクスを徹底的に身につけ、その後の自分の基盤になったという意味では、北米調理器具メーカーの日本での販売組織のプロジェクトがあります。このプロジェクトでは、1年半ほどかけ、クライアント企業全体のエコノミクスだけではなく、販売チャネルの細部まですべて含めた全体のエコシステムを設計するという幅広いものでした。販売員への詳細なヒアリングから始まり、何が生産性に結びついているのかの分析や様々な経済的シミュレーションを行い、その結果に基づき、北米型から離れた日本独自のビジネス・モデルを一から作り込んでいったことで、エコノミクスの考え方や分析スキルの基礎を徹底的に身に付けることができました。 アメリカの仕事で面白かったのは、大手外食チェーンのサプライ・チェーン見直しのプロジェクトです。これは、現在外部に頼っているサプライ・チェーンを垂直に統合したらどうなるかを検討する試行的プロジェクトで、全ての前提や条件をゼロベースで検討し直すクリエイティブなストーリーを考えることができた点で、非常に面白い経験でした。

若いコンサルタントに一言アドバイスをお願いします
川上氏: 「目の前のことを自分の能力の120パーセントで取り組んでください」ということです。これはGEでキャリアを始めた人にも伝えたいことです。「キャリアプランを作って、10年後の自分をイメージしながら今やることを決めなさい」と言う人がいますが、実践している人は少ないと思いますし、考えれば考えるほどまとまらなくなるということも多いのではないでしょうか。コンサルタントは周りに優秀な人がたくさんいて、仕事を120パーセントやることで学べることがすごくたくさんあります。だから、今学べること、今得られることを最大化することにだけ注力して、一生懸命取り組めば必ず結果がついてきます。24時間という限られた時間のなかで、一人の人間が経験できる数はそれほど大きく変わりませんが、一つの経験からどれだけ学ぶことができるかで大きな差が出ます。同じ経験から1学ぶ人と3学ぶ人、また10学ぶ人とでは、数年後の経験値が全く異なってきます。コンサルティングは数多くの課題に直面する経験をし、一つの経験で様々な角度から物を見ることができるという、学びの場としては最高の土壌です。ぜひそれを最大化して欲しいと思います。
コンサルタントとしてクライアント固有の難しい課題に真剣に向きあい、自分の能力を最大限発揮して一生懸命働いたことは、本当に自分の血と肉となって今に生きています。若さと馬力で課題に立ち向かい、がむしゃらに働くことを厭わずにチャレンジしてみてください。