金融: リテールマーケティング

背景

日本の金融サービスは、預金を中心に大きく規模を拡大してきましたが、預金という商品は、「商品が単純で、高い知識は必要ない」「どこの金融機関でも取扱商品はほぼ同じ」「価格(=金利)もしくは、立地などの便利さくらいしか違いがない」という性格を持っており、まさにコモディティ型商品(差別化の難しい普及品)でした。

しかし、金融サービスの規制緩和が進展し、金融グループの再編が進んだ結果、大手金融グループのリテール(家計向け)ビジネスの成功の鍵を握るのは、預金ではなく、投資商品や保険・年金商品になってきました。これらの商品は、「ある程度以上の知識がないと分からない」「金融機関毎に取扱商品が微妙に、またはかなり違う」「金融機関としての信頼感、安心感、親しみやすさ、などの違いが重要」という性格を持っており、コモディティ商品とは全く違うマーケティングが必要でした。

ある大手金融サービス・グループでは、こうした新たな商品分野における消費者購買行動を、徹底的な消費者調査によって正しく理解したいと考え、金融マーケティング戦略に深い知見を有するStrategy&*とのプロジェクトを行ないました。

活動内容

このプロジェクトでは、クライアントおよびStrategy&の持っていた初期仮説を、数次にわたる消費者調査で、再検証・再構築するという慎重なアプローチが取られました。まず最初にインターネット調査会社を通じたアンケートで、「老後の問題などに関して、どのような不安を持っているのか」「そうした不安に関してどのような手立てを考えているか」「どのような方法で取扱金融機関を選択しているのか」などを検証しました。

次に、調査会社が開催するグループインタビューと、クライアントの顧客を集めたグループインタビューを通じて、合計100名以上にわたる人々の意見を収集しました。その結果、投資・保険年金商品の購買に関して、いくつかの特徴的な共通点を持つ複数の消費者購買行動のパターンがあることが発見されました。

さらに、調査会社を通じて1,000名の訪問アンケート調査を行ないました。高齢者を含む調査を行ないたいという事情と、インターネットと他のチャネルとの利用動向の比較を行いたいと言う事情から、インターネット調査ではなく訪問調査が選択されました。

成果

この詳細な調査の結果、これまでの金融機関の常識とはかなり異なる発見が得られました。預金商品と投資・保険年金商品においては、消費者購買行動のプロセス自体が全く違っていたのです。大多数の消費者は、投資・保険年金商品の購買を「敷居の高い」ものと考えており、老後不安などの潜在ニーズを強く抱えているにもかかわらず、実際の金融商品購買行動のアクションにいたっていないということも明らかになりました。

こういう状況で、新たな金融商品の開発だけをいくら行なったところで、ごく一部の高知識の顧客にしか受け入れられません。むしろ、大多数の低知識の顧客にとって「安心できる、親しみやすい、敷居の低い」サービスを形成するために、商品だけではなく、チャネル戦略、広報戦略が重要であるということと、その際に気をつけなければならないポイントが明らかになりました。

* 本プロジェクトはStrategy&に改称する以前に実施したものです。